本田菊さんお誕生日おめでとうございます!
ついったでしょうもないSSを書き散らして来ました。楽しかったです。
https://twitter.com/i/moments/830413830026993665
拍手ありがとうございました~!
しかしながら、いい加減この日を紀元節に戻してほしいですよね。
アメリカによる宗教弾圧を受けているも同然なんですから。
ついったでしょうもないSSを書き散らして来ました。楽しかったです。
https://twitter.com/i/moments/830413830026993665
拍手ありがとうございました~!
しかしながら、いい加減この日を紀元節に戻してほしいですよね。
アメリカによる宗教弾圧を受けているも同然なんですから。
『日常的』 という幸せ
2012年8月30日 SS駄文垂れ流し注意。隠してないよ。手探り感ありありの黒バス
本日もあたたかい拍手ありがとうございましたー!
パソコンで書かれた無機質な字の羅列。そこに赤ペンの斜線が並ぶ。
字に対して、引っ掛かりや歪みがある分、人手のぬくもりようなものが存在していた。
斜線、斜線、マル、斜線、マル・・・・。プリントの最後に30という数字。
「・・・非常に申し上げにくいのですが・・・。」
その紙を真ん中に、一つの机に向かい合うように、二人の生徒が座っていた。
そのうちの一人、銀と青が混じったような色の髪の少年が、声量の足りない声でそう言った。それを聞いて、反対側に居た、赤髪で大柄の少年が顔を上げた。
「火神君はあほですか?」
「申し上げにくいつったわりにサラッと言いやがったな黒子てめぇ。」
「言いたくて言ったわけじゃないんです。他に表しようがなかったんですよ。」
銀髪の青年、黒子は無表情のまま溜息をついた。そして机の上の、100点満点中30点というある意味奇跡的な成績を収めた、漢字テストのプリントを見た。
「僕のヤマ勘、7割がた当たってたじゃないですか、今回の漢字テスト。なのに」
どうしてこの点数なんですか。最後まで言いはしなかった。
「いや・・・」
バスケットコートに立っている時の彼と同一人物とは思えないほど、あほ呼ばわりされた男子生徒―火神の声は小さかった。気まずそうに視線を窓に移した。
「配られた問題見て、お前に教えてもらった奴ばっかりだったのに気付いて頭ん中で『よっしゃ来た!これはいけるぜ!』って叫んだ瞬間・・・覚えたもん全部飛んだ・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・で、来週さいしっつわれたから、また教えろ、ヤマ勘。」
「ヤマ勘はもう必要ないでしょ?」
「あぁ?てめぇが90点だなんてご立派な点数取ったから、もう馬鹿の面倒見きれねぇってか?!」
自虐と逆切れの見事なコラボレーションである。火神を良く知らない人物がこの場面に出くわしたら、何かしらの脅しを受けているのではと担任に通報されかねない光景だった。
しかし、がなる火神に対して、黒子は冷静と言う名のマイペースっぷりで眉一つ動かさなかった。
「いや、だって再試ならもう問題判ってるじゃないですか。」
「なんでそんなんわかるんだよ?」
「・・・・えっ。」
黒子はなんとなく嫌な予感がした。それでも冷や汗と言うものがこの少年にはないらしい。唐突にプリントを裏返し、鉛筆を火神に差し出した。
「火神君、ちょっとここに、再テスト・・・再試という漢字を書いてみてください。」
「は?なんだいきなり。」
「少し、確かめたいことがあるんで・・・。」
「あんだ、馬鹿にしてんのか?いくら俺でもそれくらい書けるっつーの。」
片腕を椅子の背もたれに書けながら、火神は利き腕で豪快な字をそこに書いた。
―堂々と、大きく、『再死』、と。
「・・・・・・。」
沈黙する黒子に対し、火神はどうだと言わんばかりに鼻をフンと鳴らして鉛筆を転がした。
「二文字目の誤字によってえらい不穏な二字熟語になってるんですが。」
「てことは半分は当たってんだろ?だったら三角でいいだろ。」
「その交渉が成立するのは小学校の低学年までだと思います。・・・ところで、どうしてこれが合っていると思ったんですか?」
「いやだってよ、さいしって『一発で出来なかったんだからもう一辺死ぬくらいの気持ちで取り組め』ってんだろ?」
「・・・(もう深く考えるのやめましょうか)。とりあえず、正しい字を横に書いておきますから、来週のテストまでにしっかり覚えてくださいね。」
黒子は何かを諦め、青いボールペンで答えを書いて行った。裏面に書いた再死もついでに添削して。火神はそれを目で追いながら『あーそういやそんな字だったな』と呑気に呟いていた。
「おい黒子。今度のこの再試で満点取ったらハンバーガーおごれ。」
「なんですか唐突に。ていうか正直それ横暴です。」
「何か張り合いがねぇと勉強なんてやる気でねぇんだよ。代わりにしくじったら俺がおごるからよ。」
「僕はハンバーガーじゃなくてバニラシェイクでいいです。」
「へっ、相変わらず甘ったるいもんなんか飲みやがって。良いぜ、10杯でも20杯でも奢ってやる。」
なぜか妙に勝ち誇ったように笑い、火神は添削の終わったプリントを手に席を立って教室を出て行った。
―一週間後
「・・・えっと・・・とりあえず、今日はごちになります。火神君。」
机の上に崩れ落ちている火神に、黒子は躊躇いつつも、丁寧に頭を下げて言った。そして窓から吹き込む風に煽られるプリントを再度見やった。
その点数、10点
「(まさかこれ以上下がりしろがあるとは思いませんでした。)・・・ちなみにいったい何があったんですか、これ。」
「いや・・・。」
火神は突っ伏したまま応えた。
「・・・丸々同じもん出るんだったらもう答えもわかってるし、余裕じゃんって思って前日までほっといたら・・・こうなった。」
「・・・・・・。」
「監督に、喝を入れて頂きましょう、火神君。きっとその方が火神君のためになると思います。」
長い沈黙の後、黒子は無表情なままそう告げた。
放課後の、部活が始まる少し前の出来事。
----
いくらなんでもここまで馬鹿じゃないよな、火神。なんかあまりにも日常的過ぎて普通に原作でありそう。
手元に資料がない状態で書いたので、口調とかあやふやです。
黒子っちに「アホですか?」って言わせたかっただけ。
本日もあたたかい拍手ありがとうございましたー!
パソコンで書かれた無機質な字の羅列。そこに赤ペンの斜線が並ぶ。
字に対して、引っ掛かりや歪みがある分、人手のぬくもりようなものが存在していた。
斜線、斜線、マル、斜線、マル・・・・。プリントの最後に30という数字。
「・・・非常に申し上げにくいのですが・・・。」
その紙を真ん中に、一つの机に向かい合うように、二人の生徒が座っていた。
そのうちの一人、銀と青が混じったような色の髪の少年が、声量の足りない声でそう言った。それを聞いて、反対側に居た、赤髪で大柄の少年が顔を上げた。
「火神君はあほですか?」
「申し上げにくいつったわりにサラッと言いやがったな黒子てめぇ。」
「言いたくて言ったわけじゃないんです。他に表しようがなかったんですよ。」
銀髪の青年、黒子は無表情のまま溜息をついた。そして机の上の、100点満点中30点というある意味奇跡的な成績を収めた、漢字テストのプリントを見た。
「僕のヤマ勘、7割がた当たってたじゃないですか、今回の漢字テスト。なのに」
どうしてこの点数なんですか。最後まで言いはしなかった。
「いや・・・」
バスケットコートに立っている時の彼と同一人物とは思えないほど、あほ呼ばわりされた男子生徒―火神の声は小さかった。気まずそうに視線を窓に移した。
「配られた問題見て、お前に教えてもらった奴ばっかりだったのに気付いて頭ん中で『よっしゃ来た!これはいけるぜ!』って叫んだ瞬間・・・覚えたもん全部飛んだ・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・で、来週さいしっつわれたから、また教えろ、ヤマ勘。」
「ヤマ勘はもう必要ないでしょ?」
「あぁ?てめぇが90点だなんてご立派な点数取ったから、もう馬鹿の面倒見きれねぇってか?!」
自虐と逆切れの見事なコラボレーションである。火神を良く知らない人物がこの場面に出くわしたら、何かしらの脅しを受けているのではと担任に通報されかねない光景だった。
しかし、がなる火神に対して、黒子は冷静と言う名のマイペースっぷりで眉一つ動かさなかった。
「いや、だって再試ならもう問題判ってるじゃないですか。」
「なんでそんなんわかるんだよ?」
「・・・・えっ。」
黒子はなんとなく嫌な予感がした。それでも冷や汗と言うものがこの少年にはないらしい。唐突にプリントを裏返し、鉛筆を火神に差し出した。
「火神君、ちょっとここに、再テスト・・・再試という漢字を書いてみてください。」
「は?なんだいきなり。」
「少し、確かめたいことがあるんで・・・。」
「あんだ、馬鹿にしてんのか?いくら俺でもそれくらい書けるっつーの。」
片腕を椅子の背もたれに書けながら、火神は利き腕で豪快な字をそこに書いた。
―堂々と、大きく、『再死』、と。
「・・・・・・。」
沈黙する黒子に対し、火神はどうだと言わんばかりに鼻をフンと鳴らして鉛筆を転がした。
「二文字目の誤字によってえらい不穏な二字熟語になってるんですが。」
「てことは半分は当たってんだろ?だったら三角でいいだろ。」
「その交渉が成立するのは小学校の低学年までだと思います。・・・ところで、どうしてこれが合っていると思ったんですか?」
「いやだってよ、さいしって『一発で出来なかったんだからもう一辺死ぬくらいの気持ちで取り組め』ってんだろ?」
「・・・(もう深く考えるのやめましょうか)。とりあえず、正しい字を横に書いておきますから、来週のテストまでにしっかり覚えてくださいね。」
黒子は何かを諦め、青いボールペンで答えを書いて行った。裏面に書いた再死もついでに添削して。火神はそれを目で追いながら『あーそういやそんな字だったな』と呑気に呟いていた。
「おい黒子。今度のこの再試で満点取ったらハンバーガーおごれ。」
「なんですか唐突に。ていうか正直それ横暴です。」
「何か張り合いがねぇと勉強なんてやる気でねぇんだよ。代わりにしくじったら俺がおごるからよ。」
「僕はハンバーガーじゃなくてバニラシェイクでいいです。」
「へっ、相変わらず甘ったるいもんなんか飲みやがって。良いぜ、10杯でも20杯でも奢ってやる。」
なぜか妙に勝ち誇ったように笑い、火神は添削の終わったプリントを手に席を立って教室を出て行った。
―一週間後
「・・・えっと・・・とりあえず、今日はごちになります。火神君。」
机の上に崩れ落ちている火神に、黒子は躊躇いつつも、丁寧に頭を下げて言った。そして窓から吹き込む風に煽られるプリントを再度見やった。
その点数、10点
「(まさかこれ以上下がりしろがあるとは思いませんでした。)・・・ちなみにいったい何があったんですか、これ。」
「いや・・・。」
火神は突っ伏したまま応えた。
「・・・丸々同じもん出るんだったらもう答えもわかってるし、余裕じゃんって思って前日までほっといたら・・・こうなった。」
「・・・・・・。」
「監督に、喝を入れて頂きましょう、火神君。きっとその方が火神君のためになると思います。」
長い沈黙の後、黒子は無表情なままそう告げた。
放課後の、部活が始まる少し前の出来事。
----
いくらなんでもここまで馬鹿じゃないよな、火神。なんかあまりにも日常的過ぎて普通に原作でありそう。
手元に資料がない状態で書いたので、口調とかあやふやです。
黒子っちに「アホですか?」って言わせたかっただけ。
一昨日のバトンにあった14番のお題。好きキャラ上位は絵じゃないと表現できないからスルーとかいったけど、他に書けそうな奴あったから書きなぐった。
といっても台詞だけだけど。隠すので、見たい方はドラッグ。アレなネタなので無理ってな方はスルーで。
--------
5.ピッチャーの貴族とキャッチャーのトルコ。ちなみに監督はカナダだ。
「『フォーク』?野球には食器まで使うのですか?」
「いえ…そのフォークじゃなくて、球種のことですよ…。」
「あぁなるほど。ところで貴方は誰なんです?」
「カナダです!!」
「あぁそうでしたね。…全く、それにしてもどうして私がこの様な粗野なスポーツをしなければならないのでしょう。私はダンスや乗馬の方が性に合ってるというのに!」
「貴族の坊っちゃんよぉ、なんでもいいからとっとと投げてくれねぇか?」
「わかっています!では行きますよ、トルコ!私が勝ったらギレスンのヘーゼルナッツを頂きますからね!」
「へっやってみやがれ!返り討ちにしてやらぁ!」
(なんでバッテリーで対決してるの…!?)
ズガン!
「…なに地面に叩きつけてんでィ」
「お忘れなさいトルコ!!」
「あ、あの、トルコさん。キャッチャーのプロテクターは正面に着けないと意味が…それじゃ亀みたいですよ…。」
「ハッハッハ!亀ときたか!言われてみりゃそうだな。…ってお前さん誰でぃ?」
「カナダですってば!!」
貴族の家のスポーツっていったらサッカーとかウインタースポーツだけど、流れ的に自分の趣味に走った。←
-------
11.フィンの下着を盗んでいるところをロシアに見つかってしまった不憫
「ね―ねースウェーデン君」
「なじょした?」
「さっきね、プロイセン君がフィンランド君の下着盗って行くの、僕見ちゃったんだ。」
「…!!どこさ行った…?!」
「(うわぁ怖い顔。)あっちの方だよ。」
ドドドドド!
「うおぉ?!何の用だスウェーデン!!」
「嫁の下着ば返せ…!!」
「(顔怖ぇぇ!)ロ、ロシアの野郎チクりやがったな!!ってギャアアア!!斧は止めろおぉぉ!!」
「おひえぇぇ!!ス、スーさん、そ、その血塗れの斧は一体ぃ…?!」
「ん…」
「あ、これ僕が失くしたと思ってた下着…って、えぇえぇ?!どういう状況なんですかこれ!!」
「もう、下着外に干すなィ。」
不憫^^
-------
13.フランスと友達以上になりたいけど嫌われるのが怖くて踏み出せない貴族
「フ、フランス!」
「うわっ、なによオーストリア。」
「『うわっ』とはなんですか失敬な!!今日はせっかくリンツァートルテを持って来たと言うのに!!」
「へー、どういう風の吹き回し?まぁお兄さん、お前の顔と菓子は嫌いじゃないからいいんだけどさ。」
「また貴方はお下品な事を!私が…!」
―私がどんな想いでいるかも知らないで…!
貴方に、これ以上嫌われないよう、必死だというのに…貴方は全然わかっていない…。
「…という夢をみました。」
「今すぐお忘れなさいハンガリー!!」
「はーい。(後で日本さんにメールしようっと。)」
私は貴族をどうしたいんだろうか。
といっても台詞だけだけど。隠すので、見たい方はドラッグ。アレなネタなので無理ってな方はスルーで。
--------
5.ピッチャーの貴族とキャッチャーのトルコ。ちなみに監督はカナダだ。
「『フォーク』?野球には食器まで使うのですか?」
「いえ…そのフォークじゃなくて、球種のことですよ…。」
「あぁなるほど。ところで貴方は誰なんです?」
「カナダです!!」
「あぁそうでしたね。…全く、それにしてもどうして私がこの様な粗野なスポーツをしなければならないのでしょう。私はダンスや乗馬の方が性に合ってるというのに!」
「貴族の坊っちゃんよぉ、なんでもいいからとっとと投げてくれねぇか?」
「わかっています!では行きますよ、トルコ!私が勝ったらギレスンのヘーゼルナッツを頂きますからね!」
「へっやってみやがれ!返り討ちにしてやらぁ!」
(なんでバッテリーで対決してるの…!?)
ズガン!
「…なに地面に叩きつけてんでィ」
「お忘れなさいトルコ!!」
「あ、あの、トルコさん。キャッチャーのプロテクターは正面に着けないと意味が…それじゃ亀みたいですよ…。」
「ハッハッハ!亀ときたか!言われてみりゃそうだな。…ってお前さん誰でぃ?」
「カナダですってば!!」
貴族の家のスポーツっていったらサッカーとかウインタースポーツだけど、流れ的に自分の趣味に走った。←
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11.フィンの下着を盗んでいるところをロシアに見つかってしまった不憫
「ね―ねースウェーデン君」
「なじょした?」
「さっきね、プロイセン君がフィンランド君の下着盗って行くの、僕見ちゃったんだ。」
「…!!どこさ行った…?!」
「(うわぁ怖い顔。)あっちの方だよ。」
ドドドドド!
「うおぉ?!何の用だスウェーデン!!」
「嫁の下着ば返せ…!!」
「(顔怖ぇぇ!)ロ、ロシアの野郎チクりやがったな!!ってギャアアア!!斧は止めろおぉぉ!!」
「おひえぇぇ!!ス、スーさん、そ、その血塗れの斧は一体ぃ…?!」
「ん…」
「あ、これ僕が失くしたと思ってた下着…って、えぇえぇ?!どういう状況なんですかこれ!!」
「もう、下着外に干すなィ。」
不憫^^
-------
13.フランスと友達以上になりたいけど嫌われるのが怖くて踏み出せない貴族
「フ、フランス!」
「うわっ、なによオーストリア。」
「『うわっ』とはなんですか失敬な!!今日はせっかくリンツァートルテを持って来たと言うのに!!」
「へー、どういう風の吹き回し?まぁお兄さん、お前の顔と菓子は嫌いじゃないからいいんだけどさ。」
「また貴方はお下品な事を!私が…!」
―私がどんな想いでいるかも知らないで…!
貴方に、これ以上嫌われないよう、必死だというのに…貴方は全然わかっていない…。
「…という夢をみました。」
「今すぐお忘れなさいハンガリー!!」
「はーい。(後で日本さんにメールしようっと。)」
私は貴族をどうしたいんだろうか。
おなかがすいたらTEL(電話)してピザ食べよう
2009年3月16日 SS元ネタが元ネタなので隠し隠し。APH日本の家でお食事会。
「ごちそうさまー!あーおいしかった!」
両手を合わせるという最近教わった作法。それを済ませるとイタリアは、未だになれない箸を置く。
それよりもだいぶ早く食べ終えていたドイツはグラスにビールを注いでいた。
日本の家でラッパ飲みは控えているせいか、その動作には、僅かだがもどかしさが現れていた。
「いえ、お粗末さまでした。」
腰が低すぎではないのか。と、いつもドイツが懸念しているとは露知らず、日本は恭しく頭を下げ、綺麗に平らげられた食器を片付け始めた。
「うむ。相変わらず日本の料理は美味いな。ビールともよく合う。」
「でも色合いとか地味だよね。」
「・・・・。」
屈託のない、どちらかといえば締りのないヘラッとした笑みでそういうと日本の手が一瞬止まった。
ドイツはいつもの事ながら、食後早々胃が痛くなりかけつつもあわてて口を開く。
「お、お前はまた余計なことを。いいか、食事は滋養があればそれでいい。煌びやかな見た目などいらん。
そういった意味では日本の料理は無駄がない。そして美味い上におかずはビールとあう。」
「ドイツ、ビール好きすぎ。」
「確か豚も丸ごと使うんだったな?」
「あ、はい耳から尻尾まで隈なく。少し前までは肉を食べるのには躊躇していましたが今はもうすっかり慣れましたし。イタリア君のおかげでレパートリーも増えました。」
日本がそう言うと、イタリアも、『はいはーい』といわんばかりに挙手した。
「俺も日本の作る料理は色々参考にさせてもらってるよー。あー…でもアレだけは未だに克服できないなぁ。」
かと思えば突然自称チャームポイントの癖毛が下がった。
「え?なんですか?」
「ナットー」
やはりそうか…。と日本は心の中で呟いた。
確かにあの食材は製法が特殊で自分の家以外では見たことがない。普段から柔軟でノリのいいフランスにもやんわりと断られた経験がある。
そこに文化の違いという壁があるとはいえ、やはり自分が作った食品の受けが悪いのは物悲しい。
「…そう、ですか。栄養満点でとても美味しいのですが…。アレだけでご飯お代わりできますよ。」
「む。確かにアレの栄養価は申し分ない。…だが、どうしても…な。」
こういう場合、日本のフォローに回るドイツでさえ冷や汗を一筋流していた。
その反応は一見追い討ちのようだったが、逆にそれが火種になったかのように日本は突然顔を上げた。
「あ、あの。それでしたらいい方法があります。」
「なになに~?」
好奇心旺盛なイタリアらしく興味津々な瞳が向けられる。
随分治ってきたとはいえ、自分からすればまだまだ内向的な日本の提案にドイツも耳を傾けた。
「イタリア君。食後早々で申し訳ないのですがパスタを茹でて頂けませんか?」
「ここにあるよ。」
「なんですでに茹で上がったパスタを所持しとるんだお前は。」
用意周到という言葉には当てはまらないイタリアの動きに、ドイツが気付かれないよう拳一つ分距離を空けた。
「ヴェ。えへへ~すごいでしょー。」
「…では、それを拝借。」
謎の空間から取り出したパスタ入りの鍋を受け取ったかと思えば、それを均等に3人分の皿に分けて盛り付ける。かと思えば日本は部屋の奥からなにやら白いパックを持ってきた。
「何する気ー?って、その手にあるのは…!」
「そうです、納豆です。これを、パスタに混ぜます!」
「なっ…!?」
「やめてえええええええええええええ!」
突然の行動に、今まで黙って見届けていたドイツが呆然とした。
その隣ではまるで他国の侵略を受けたかのような悲鳴が上がる。
そんな二人にはお構いなしに日本は再び奥から、今度はなにやら甕と野草と思しきものを取り出した。
「そして刻んだ紫蘇とこれまた私が長年かけて作った梅干を振り掛けます!」
「・・・・・。」
「おい、日本!イタリアが黙りこむという前代未聞の状態になっているぞ!それぐらいにしてお・・・」
「仕上げに、醤油をベースにした特製ソースをかけて出来上がりです。これぞ名づけて『和風パスタ』!さぁ召し上がれ!」
「こういうときだけ偉い元気だなお前は!!」
「…あれ?イタリア君は?」
「起きたまま夢を見ている。」
「そうですか…残念です。こんなにおいしいのに。ドイツさんも如何ですか?」
「お、俺はイカの一夜干しで充分だ。」
―日本の味覚は未だに所々わからん…。
イタリアがいつもの奇声を発しながら現実逃避している側らで、ドイツはグラスのビールに口をつけそう呟いた。
------
納豆入り梅シソパスタ。個人的には結構好きなんですけど。外国からしたらとんでもなさそうな食材が入り乱れていますね、梅干と納豆。シソはどうなんだろう。
昨日の食文化ネタで思いついたから書きなぐった。
いっそ会話文だけにしておけばよかったなー。
title song by GARNETCROW-君の家に着くまでずっと走ってゆく-
「ごちそうさまー!あーおいしかった!」
両手を合わせるという最近教わった作法。それを済ませるとイタリアは、未だになれない箸を置く。
それよりもだいぶ早く食べ終えていたドイツはグラスにビールを注いでいた。
日本の家でラッパ飲みは控えているせいか、その動作には、僅かだがもどかしさが現れていた。
「いえ、お粗末さまでした。」
腰が低すぎではないのか。と、いつもドイツが懸念しているとは露知らず、日本は恭しく頭を下げ、綺麗に平らげられた食器を片付け始めた。
「うむ。相変わらず日本の料理は美味いな。ビールともよく合う。」
「でも色合いとか地味だよね。」
「・・・・。」
屈託のない、どちらかといえば締りのないヘラッとした笑みでそういうと日本の手が一瞬止まった。
ドイツはいつもの事ながら、食後早々胃が痛くなりかけつつもあわてて口を開く。
「お、お前はまた余計なことを。いいか、食事は滋養があればそれでいい。煌びやかな見た目などいらん。
そういった意味では日本の料理は無駄がない。そして美味い上におかずはビールとあう。」
「ドイツ、ビール好きすぎ。」
「確か豚も丸ごと使うんだったな?」
「あ、はい耳から尻尾まで隈なく。少し前までは肉を食べるのには躊躇していましたが今はもうすっかり慣れましたし。イタリア君のおかげでレパートリーも増えました。」
日本がそう言うと、イタリアも、『はいはーい』といわんばかりに挙手した。
「俺も日本の作る料理は色々参考にさせてもらってるよー。あー…でもアレだけは未だに克服できないなぁ。」
かと思えば突然自称チャームポイントの癖毛が下がった。
「え?なんですか?」
「ナットー」
やはりそうか…。と日本は心の中で呟いた。
確かにあの食材は製法が特殊で自分の家以外では見たことがない。普段から柔軟でノリのいいフランスにもやんわりと断られた経験がある。
そこに文化の違いという壁があるとはいえ、やはり自分が作った食品の受けが悪いのは物悲しい。
「…そう、ですか。栄養満点でとても美味しいのですが…。アレだけでご飯お代わりできますよ。」
「む。確かにアレの栄養価は申し分ない。…だが、どうしても…な。」
こういう場合、日本のフォローに回るドイツでさえ冷や汗を一筋流していた。
その反応は一見追い討ちのようだったが、逆にそれが火種になったかのように日本は突然顔を上げた。
「あ、あの。それでしたらいい方法があります。」
「なになに~?」
好奇心旺盛なイタリアらしく興味津々な瞳が向けられる。
随分治ってきたとはいえ、自分からすればまだまだ内向的な日本の提案にドイツも耳を傾けた。
「イタリア君。食後早々で申し訳ないのですがパスタを茹でて頂けませんか?」
「ここにあるよ。」
「なんですでに茹で上がったパスタを所持しとるんだお前は。」
用意周到という言葉には当てはまらないイタリアの動きに、ドイツが気付かれないよう拳一つ分距離を空けた。
「ヴェ。えへへ~すごいでしょー。」
「…では、それを拝借。」
謎の空間から取り出したパスタ入りの鍋を受け取ったかと思えば、それを均等に3人分の皿に分けて盛り付ける。かと思えば日本は部屋の奥からなにやら白いパックを持ってきた。
「何する気ー?って、その手にあるのは…!」
「そうです、納豆です。これを、パスタに混ぜます!」
「なっ…!?」
「やめてえええええええええええええ!」
突然の行動に、今まで黙って見届けていたドイツが呆然とした。
その隣ではまるで他国の侵略を受けたかのような悲鳴が上がる。
そんな二人にはお構いなしに日本は再び奥から、今度はなにやら甕と野草と思しきものを取り出した。
「そして刻んだ紫蘇とこれまた私が長年かけて作った梅干を振り掛けます!」
「・・・・・。」
「おい、日本!イタリアが黙りこむという前代未聞の状態になっているぞ!それぐらいにしてお・・・」
「仕上げに、醤油をベースにした特製ソースをかけて出来上がりです。これぞ名づけて『和風パスタ』!さぁ召し上がれ!」
「こういうときだけ偉い元気だなお前は!!」
「…あれ?イタリア君は?」
「起きたまま夢を見ている。」
「そうですか…残念です。こんなにおいしいのに。ドイツさんも如何ですか?」
「お、俺はイカの一夜干しで充分だ。」
―日本の味覚は未だに所々わからん…。
イタリアがいつもの奇声を発しながら現実逃避している側らで、ドイツはグラスのビールに口をつけそう呟いた。
------
納豆入り梅シソパスタ。個人的には結構好きなんですけど。外国からしたらとんでもなさそうな食材が入り乱れていますね、梅干と納豆。シソはどうなんだろう。
昨日の食文化ネタで思いついたから書きなぐった。
いっそ会話文だけにしておけばよかったなー。
title song by GARNETCROW-君の家に着くまでずっと走ってゆく-
優しく触れる君の手に戸惑った
2009年2月19日 SS コメント (1)痛い
苦しい
悲しい
怖い
憎い
妬ましい
それしかない。
それが俺を構成しているから。
それがないと俺は存在できないから。
でも、痛いのも、苦しいのも、悲しいのも、怖いのも、憎いのも、妬ましいのも嫌だ。
だけど、それがなくなったら俺は消える。いやだ。
なくなることはない、溢れかえって、全部、俺になる。
暗い、クライ、くらい。
暗くて、上も下も右も左も判らなかったのに。
あいつが来たせいで、目が眩むほどまぶしい。
嫌いなのに、いやなのに、掴みたくなる。包まれたくなる。
お前はなんだ。なぜそんなに眩い。
お前は言った、俺を消すんじゃなくて、俺を受け入れると。
なぜお前は・・・・・俺を・・・・・
「お前を殺して俺も死ぬ…!!」
そうだ、受け入れると言ったんだ。だからお前は、俺と一緒に消してやる。
痛みが消えて置き去りの罪だけ 私を責める 逃げる事許さない
今目の前の光(あい)を求めていいのかな・・・?
Please,,,forgive me 祈りはつのり
いつかその日が来たときには もっと強く大きな力で
so Lovin’ that’ll last forever
-----
いや、なんかクリアした後にガネクロのPlease, forgive me聞いたら、なんかまんまゲーデぽかったから。殴り書いた。
-song by GARNET CROW 『Please, forgive me』-
苦しい
悲しい
怖い
憎い
妬ましい
それしかない。
それが俺を構成しているから。
それがないと俺は存在できないから。
でも、痛いのも、苦しいのも、悲しいのも、怖いのも、憎いのも、妬ましいのも嫌だ。
だけど、それがなくなったら俺は消える。いやだ。
なくなることはない、溢れかえって、全部、俺になる。
暗い、クライ、くらい。
暗くて、上も下も右も左も判らなかったのに。
あいつが来たせいで、目が眩むほどまぶしい。
嫌いなのに、いやなのに、掴みたくなる。包まれたくなる。
お前はなんだ。なぜそんなに眩い。
お前は言った、俺を消すんじゃなくて、俺を受け入れると。
なぜお前は・・・・・俺を・・・・・
「お前を殺して俺も死ぬ…!!」
そうだ、受け入れると言ったんだ。だからお前は、俺と一緒に消してやる。
痛みが消えて置き去りの罪だけ 私を責める 逃げる事許さない
今目の前の光(あい)を求めていいのかな・・・?
Please,,,forgive me 祈りはつのり
いつかその日が来たときには もっと強く大きな力で
so Lovin’ that’ll last forever
-----
いや、なんかクリアした後にガネクロのPlease, forgive me聞いたら、なんかまんまゲーデぽかったから。殴り書いた。
-song by GARNET CROW 『Please, forgive me』-
ねぇ、軌道に乗ったその続きは愛のバジェット増やさなくちゃ
2008年12月6日 SS俺が城錠の元に弟子入りして大分経った。
自分で言うのもなんだけど、腕前はかなり上達したと思う。
城錠は相変わらず母さんとの事は自分からはあまり話さないけど、でも大体俺が想像したとおりの、いわゆるバカップル夫婦っぽい生活を送ってるみたいだ。
最近は城錠が何を考えているのか、口に出さなくてもわかるようになってきて、コミュニケーションもバッチリだ。
と思ってたんだけど。
「おい!もたもたすんな、さっさと木材運べ!!」
「う、うぃっす!」
今日は違う。
「なぁ雷斗。今日の城錠さんすげぇ荒れてねぇ?お前なんかしたんじゃねぇの?」
「なんで俺のせいなんですか、特になんもしてませんよ。」
「お前ら!!無駄口叩いてないで仕事しろ!!!」
「「はいっ!」」
ものすっっっげぇ機嫌が悪い。
元々無表情な城錠の眉間にやけに目立つ皺が一本、はっきりと刻まれてる。
正直、城錠を怒らせたような覚えは無い。
仕事はちゃんとしてるし、口は動くけどそれ以上に腕も動かしてる。
つーか、昨日城錠には「仕事の覚えも作業も早い」って褒められたばっかりだ。
今日は、俺が何かするより前から既に城錠の機嫌の悪さはMAXだった。
ガキのころからなんだかんだで城錠に世話になってきたけど、こんな風に荒れることはなかった。
あるとすれば、母さんが昔、城錠を家に呼んで昼飯作ってあげた時に、清四郎の話をしたら、突然機嫌が悪くなって飛び出したってくらいか?
だけど、あれ以来城錠が声を荒上げて怒鳴ったりするようなことはない。
理由もなくイライラする事なんて誰でもあることだけど…。
「ここ、寸法間違ってんじゃねぇか!やり直せ!」
「す、すんません!!」
ぶっちゃけ無茶苦茶怖い。母さんがキレた時並みに怖い。
「な、なぁ城錠…さん。」
「あ?なんだ雷斗。」
「な、なんかあったのか…いや、あったんデスカ…?」
「なんだそれは。」
「いや、だって、なんか今日すっげぇ機嫌悪いから…」
「悪くねぇよ!」
いや、その返事が既に悪いことを証明してますよ、お義父さん。
なんだってんだ、いい年してんのになんかすげぇ子供みたいな…。
…そう、そうだ。なんていうか、子供が拗ねてるみたいな感じなんだ、今日の城錠は。
「もしかして、母さんと何かあった、…とか?」
「何もねぇよ!さっさと腕動かせ!!」
…あったんだな。
それはそれで珍しいけど。
うーん。なんだろな、母さんと関わることでこんなに機嫌が悪くなるなんて…。
まさか、母さんの奴、この期に及んで清四郎の話でもしたのか…?
いや、母さんもさすがにそこまで鈍感じゃない。それに、例の学歴コンプレックスは乗り越えたはずだ。
だとしたらなんだ…?
母さんと堂島さんが話してるところでも見たのか?
いや、でもこの二人の間柄は城錠も知ってるはずだし・・・。
―キーンコーンカーンコーンー…
うんうん唸って脳内で自問自答を繰り返しているうちに、昼休みを告げる鐘が鳴った。
弁当持ちの奴らは適当な場所に腰を下ろしたり、そうじゃない奴は近くのコンビニに買出しに行ったりし始める。
城錠は毎日母さんの愛情弁当だからこの時間は外出したりしない。
…はずなのに。
城錠は眉間の皺をそのままに現場を離れようとしていた。
「あれ?弁当じゃないのか?」
「あぁ?!」
「うっ。」
やばい、なんか怒りのボルテージがあがった。なんだ、なんなんだよ。
つーか怖い!なんで金槌持ってんだよ!!暴力反対!!DV反対!!!!
「尚哉ー!」
身の危険を仄かに感じたところで、この場の空気に全っ然合わない声が割って入ってきた。
「…夏見。」
「あ、母さん。」
あぁ、持つべきものはお母様。城錠の表情がちょっとだけ怖くなくなった。
母さんはそれでもやっぱり不機嫌な城錠の元に駆け寄る。
「どうしたんだ。現場にくるなんて珍しいな。危ないからあんまりうろつくな。」
「『どうしたんだ。』じゃないでしょ。はい、お弁当!」
「・・・・。」
おーい、俺がいつの間にかそっちのけになってまーす。
とでも言おうかと思った位に、母さんはイイ笑顔で城錠にデカイ弁当を差し出した。
「…?箱が違うな。それに暖けぇ。」
「うん、だって尚哉、朝お弁当忘れて行ったでしょ?どうせ届けるなら出来立てにしたかったから。」
「…!わざわざ作り直して届けにきたのか…?!」
「そうよ~?…というわけで、雷斗。アンタにはこっちね。」
と、俺には、多分朝城錠が忘れていったほうの弁当を渡してきた。
ものすごく突っ込みどころ満載な感じを堪えて、それを受け取りながら俺は城錠を見やった。
「わ、悪ぃな。…サンキュ。」
「どういたしまして!」
うわー…。なんですかこの超幸せオーラは。
いつの間にか城錠の眉間の皺が綺麗さっぱりなくなって、バックではなんかパァァってな感じで花でも咲いてそうだ。よく見れば頬までうっすら紅いし。
つーか、これは、まさかとは思うけど。
「…なぁ、城錠?」
「なんだ?」
「今日、午前中ずっと機嫌が悪かったのって、母さんの弁当忘れたから…とか?」
「…別に。悪くねぇだろ。」
「いや、確実に嵐吹き荒れまくってただろ!!」
「え?なに、尚哉の機嫌そんなに悪かったの?」
「あぁ、これ以上ないくらい。」
俺があきれ返ってそういうと、母さんは、ぶっちゃけその年には似合わない、小悪魔的な笑みを浮かべた。
「もう、尚哉ったら。子供みたいなんだから。」
「うるせぇな!別に機嫌が悪いなんて一言も…!」
「はいはい、照れないの。」
「照れてねぇ!つーか、休憩中でもその辺に色んなもん落ちてて危ねぇんだから、早く家に戻れ、夏見。」
「はーい。」
うんうん。いつまでも夫婦円満でなにより。母親の幸せは息子である俺の幸せでもありますよ、かあさん。
でもなんでだろうね、なんかすげえ、思いっきり笑いがなら怒鳴りつけて泣きてぇ。
…つーか。
「いちゃつくんなら外に行け!このバカップル夫婦ー!!!!」
その後俺は、桜田麩でハートが描かれ、海苔で『尚哉&夏見』と書かれた弁当で止めの一撃を喰らうのだった。
― 煙を上げて飛び出した二人のロケット宙を舞うよ
悲しみなんて地上に残しユラユラ揺れて彷徨うよ
song by GARNET CROW-二人のロケット-
----
DEARMYSUN、城錠再婚ルートその後の話。
あー、城錠パネェ。夏見には本気で幸せになってほしい。
ところで話まったく変わりますが、最近のIQ○プリのナレーションすごいですね、司馬ちゅにシギーにしょうゆにしょこたんに周泰でてますよ。
自分で言うのもなんだけど、腕前はかなり上達したと思う。
城錠は相変わらず母さんとの事は自分からはあまり話さないけど、でも大体俺が想像したとおりの、いわゆるバカップル夫婦っぽい生活を送ってるみたいだ。
最近は城錠が何を考えているのか、口に出さなくてもわかるようになってきて、コミュニケーションもバッチリだ。
と思ってたんだけど。
「おい!もたもたすんな、さっさと木材運べ!!」
「う、うぃっす!」
今日は違う。
「なぁ雷斗。今日の城錠さんすげぇ荒れてねぇ?お前なんかしたんじゃねぇの?」
「なんで俺のせいなんですか、特になんもしてませんよ。」
「お前ら!!無駄口叩いてないで仕事しろ!!!」
「「はいっ!」」
ものすっっっげぇ機嫌が悪い。
元々無表情な城錠の眉間にやけに目立つ皺が一本、はっきりと刻まれてる。
正直、城錠を怒らせたような覚えは無い。
仕事はちゃんとしてるし、口は動くけどそれ以上に腕も動かしてる。
つーか、昨日城錠には「仕事の覚えも作業も早い」って褒められたばっかりだ。
今日は、俺が何かするより前から既に城錠の機嫌の悪さはMAXだった。
ガキのころからなんだかんだで城錠に世話になってきたけど、こんな風に荒れることはなかった。
あるとすれば、母さんが昔、城錠を家に呼んで昼飯作ってあげた時に、清四郎の話をしたら、突然機嫌が悪くなって飛び出したってくらいか?
だけど、あれ以来城錠が声を荒上げて怒鳴ったりするようなことはない。
理由もなくイライラする事なんて誰でもあることだけど…。
「ここ、寸法間違ってんじゃねぇか!やり直せ!」
「す、すんません!!」
ぶっちゃけ無茶苦茶怖い。母さんがキレた時並みに怖い。
「な、なぁ城錠…さん。」
「あ?なんだ雷斗。」
「な、なんかあったのか…いや、あったんデスカ…?」
「なんだそれは。」
「いや、だって、なんか今日すっげぇ機嫌悪いから…」
「悪くねぇよ!」
いや、その返事が既に悪いことを証明してますよ、お義父さん。
なんだってんだ、いい年してんのになんかすげぇ子供みたいな…。
…そう、そうだ。なんていうか、子供が拗ねてるみたいな感じなんだ、今日の城錠は。
「もしかして、母さんと何かあった、…とか?」
「何もねぇよ!さっさと腕動かせ!!」
…あったんだな。
それはそれで珍しいけど。
うーん。なんだろな、母さんと関わることでこんなに機嫌が悪くなるなんて…。
まさか、母さんの奴、この期に及んで清四郎の話でもしたのか…?
いや、母さんもさすがにそこまで鈍感じゃない。それに、例の学歴コンプレックスは乗り越えたはずだ。
だとしたらなんだ…?
母さんと堂島さんが話してるところでも見たのか?
いや、でもこの二人の間柄は城錠も知ってるはずだし・・・。
―キーンコーンカーンコーンー…
うんうん唸って脳内で自問自答を繰り返しているうちに、昼休みを告げる鐘が鳴った。
弁当持ちの奴らは適当な場所に腰を下ろしたり、そうじゃない奴は近くのコンビニに買出しに行ったりし始める。
城錠は毎日母さんの愛情弁当だからこの時間は外出したりしない。
…はずなのに。
城錠は眉間の皺をそのままに現場を離れようとしていた。
「あれ?弁当じゃないのか?」
「あぁ?!」
「うっ。」
やばい、なんか怒りのボルテージがあがった。なんだ、なんなんだよ。
つーか怖い!なんで金槌持ってんだよ!!暴力反対!!DV反対!!!!
「尚哉ー!」
身の危険を仄かに感じたところで、この場の空気に全っ然合わない声が割って入ってきた。
「…夏見。」
「あ、母さん。」
あぁ、持つべきものはお母様。城錠の表情がちょっとだけ怖くなくなった。
母さんはそれでもやっぱり不機嫌な城錠の元に駆け寄る。
「どうしたんだ。現場にくるなんて珍しいな。危ないからあんまりうろつくな。」
「『どうしたんだ。』じゃないでしょ。はい、お弁当!」
「・・・・。」
おーい、俺がいつの間にかそっちのけになってまーす。
とでも言おうかと思った位に、母さんはイイ笑顔で城錠にデカイ弁当を差し出した。
「…?箱が違うな。それに暖けぇ。」
「うん、だって尚哉、朝お弁当忘れて行ったでしょ?どうせ届けるなら出来立てにしたかったから。」
「…!わざわざ作り直して届けにきたのか…?!」
「そうよ~?…というわけで、雷斗。アンタにはこっちね。」
と、俺には、多分朝城錠が忘れていったほうの弁当を渡してきた。
ものすごく突っ込みどころ満載な感じを堪えて、それを受け取りながら俺は城錠を見やった。
「わ、悪ぃな。…サンキュ。」
「どういたしまして!」
うわー…。なんですかこの超幸せオーラは。
いつの間にか城錠の眉間の皺が綺麗さっぱりなくなって、バックではなんかパァァってな感じで花でも咲いてそうだ。よく見れば頬までうっすら紅いし。
つーか、これは、まさかとは思うけど。
「…なぁ、城錠?」
「なんだ?」
「今日、午前中ずっと機嫌が悪かったのって、母さんの弁当忘れたから…とか?」
「…別に。悪くねぇだろ。」
「いや、確実に嵐吹き荒れまくってただろ!!」
「え?なに、尚哉の機嫌そんなに悪かったの?」
「あぁ、これ以上ないくらい。」
俺があきれ返ってそういうと、母さんは、ぶっちゃけその年には似合わない、小悪魔的な笑みを浮かべた。
「もう、尚哉ったら。子供みたいなんだから。」
「うるせぇな!別に機嫌が悪いなんて一言も…!」
「はいはい、照れないの。」
「照れてねぇ!つーか、休憩中でもその辺に色んなもん落ちてて危ねぇんだから、早く家に戻れ、夏見。」
「はーい。」
うんうん。いつまでも夫婦円満でなにより。母親の幸せは息子である俺の幸せでもありますよ、かあさん。
でもなんでだろうね、なんかすげえ、思いっきり笑いがなら怒鳴りつけて泣きてぇ。
…つーか。
「いちゃつくんなら外に行け!このバカップル夫婦ー!!!!」
その後俺は、桜田麩でハートが描かれ、海苔で『尚哉&夏見』と書かれた弁当で止めの一撃を喰らうのだった。
― 煙を上げて飛び出した二人のロケット宙を舞うよ
悲しみなんて地上に残しユラユラ揺れて彷徨うよ
song by GARNET CROW-二人のロケット-
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DEARMYSUN、城錠再婚ルートその後の話。
あー、城錠パネェ。夏見には本気で幸せになってほしい。
ところで話まったく変わりますが、最近のIQ○プリのナレーションすごいですね、司馬ちゅにシギーにしょうゆにしょこたんに周泰でてますよ。
久しぶりだねこんなにゆっくり話をしてる
2008年9月23日 SS コメント (1)今日は父の叔父が午前中にやってきて、案の定私が車で父の叔母の家~叔父の家まで送迎。
7時過ぎくらいに他の親戚の方が家に来て夕飯を食べて行きます。
最終的に一人、父の従兄弟に当たる人を車で送るので、私は挨拶がすんだ後部屋に篭ってました。
そしてゲームをすること数十分、ハルからお電話。
「もしもーし、どうしたー?」(私)
「あのさー、煌の家の近くにゲームショップあったっけ?」(ハル)
「えー、私の近所って行ったら○か×くらいだけど。」(私)
「いやー実はポケモンのプラチナが欲しくて…」(ハル)
「あははは、でたー」(私)
「でたーあははは。で、○には行ったんだけど売り切れで、×も行きたいけど道がわからないんだよねー」(ハル)
というわけで、退屈な時間が大変有意義な時間になりました。自分でも驚くほど爽やかに笑った気がする、今日この頃。
急遽家の前でハルと合流して×店へ。
ですが肝心のソフトは売り切れ。
「じゃあ車出すから△(某大型スーパー)行ってみる?」(私)
「まじでー!」(ハル)
一旦私の家にもどり車をだして大型スーパーへ。
ここからちょっと文章を変えてみる。
-----
車の中では私の音楽プレイヤーがランダムに選んだアーティストのBGMが流れていた。中途半端な時間帯で車の進行はとてもスムーズで快適だ。
8月の末日に会ってから一度も連絡をとっていなかった私たちの会話は、自然と互いの近況報告になる。
2曲目が終わるのとほぼ同時に車は駐車場についた。私たちは足早に目的の場所へと向かう。
しかしゲームショップコーナーの棚にソフトは置いていなかった。
私たちの中では、見本となるソフトのケースが陳列棚に無い以上、『そのソフトは売り切れである』というのが常識である。
だが、ここまできて諦めるのは口惜しい。私はハルに、一応店員に確認してみることを薦めた。ハルは意を決してカウンターに歩み寄った。
「すみませーん。ポケモンのプラチナってありますか?」
「申し訳ありません品切れです」
と答える店員の姿が私とハルの脳裏に浮かんだ。
ハルの後ろで私は、このあとお茶でもして帰るか、と今後の行動を組み立てていた。
しかし、その店員は私たちの予想を裏切った。
「はい、ありますよ。」
棚には確かに陳列されていなかったそれを、青年の店員はいとも容易く私達に掲げて見せたのだ。
私は驚いた。
ただの付き添いできた私がここまで驚いたのだ、買いに来た本人であるハルはもっと驚いただろう。
ハルは思わず店のカウンターに身を乗り出した。
「う”ぇっ!?Σ(゚д゚;) 」
ハルは確かにそう言った。
そのとき私の目にはハルの後ろ姿しか写っていなかったが、ハルがどんな表情をしていたのか想像するのは容易だった。
私はハルの喜ぶよりまず驚いたその反応に思わず笑ってしまった。
前には驚いたまま購入を希望する女、その後ろには腹を抱えて笑う女。
店員の表情は確実に奇妙な物をみるそれに変わる。
無事に購入を終えた後もハルは
「これで中身が違ったらどうしよう」
と一人、言い知れない不安と猜疑心を抱えていた。
私たちはその後、向かいのコーヒーショップに寄り道した。
互いに注文した物を受け取り、席についてほっと一息いれたところで、ハルは袋をあけ、確実に自分が求めていた物であるということを確認し、ようやく笑ってみせた。
そのまま私たちは短い時間の中で、今後の大学生活を想像して愁い、このまま悠久の時を過ごしたいという思いを抱えながら店を出た。
ハルを家の近くまで送り、私も家に着いた。
まだ客人たちは楽しげに歓談している。
私はそのうちの一人を車で送るためにもうしばらく起きていなければならない。
酒に酔った人間への対応と明日から始まる後期の大学生活を考えると思わずため息が漏れる。
そして、大学のホームページを見て、私は明日講義が無いことを知るのであった。
----
はい、というわけでした。この物語はノンフィクションです。
憂鬱だった祝日が非常に楽しい物に変わりました。(笑)
これからも遠慮しないで電話かけんしゃい、ハル。
title song by GARNET CROW -夢のひとつ-
7時過ぎくらいに他の親戚の方が家に来て夕飯を食べて行きます。
最終的に一人、父の従兄弟に当たる人を車で送るので、私は挨拶がすんだ後部屋に篭ってました。
そしてゲームをすること数十分、ハルからお電話。
「もしもーし、どうしたー?」(私)
「あのさー、煌の家の近くにゲームショップあったっけ?」(ハル)
「えー、私の近所って行ったら○か×くらいだけど。」(私)
「いやー実はポケモンのプラチナが欲しくて…」(ハル)
「あははは、でたー」(私)
「でたーあははは。で、○には行ったんだけど売り切れで、×も行きたいけど道がわからないんだよねー」(ハル)
というわけで、退屈な時間が大変有意義な時間になりました。自分でも驚くほど爽やかに笑った気がする、今日この頃。
急遽家の前でハルと合流して×店へ。
ですが肝心のソフトは売り切れ。
「じゃあ車出すから△(某大型スーパー)行ってみる?」(私)
「まじでー!」(ハル)
一旦私の家にもどり車をだして大型スーパーへ。
ここからちょっと文章を変えてみる。
-----
車の中では私の音楽プレイヤーがランダムに選んだアーティストのBGMが流れていた。中途半端な時間帯で車の進行はとてもスムーズで快適だ。
8月の末日に会ってから一度も連絡をとっていなかった私たちの会話は、自然と互いの近況報告になる。
2曲目が終わるのとほぼ同時に車は駐車場についた。私たちは足早に目的の場所へと向かう。
しかしゲームショップコーナーの棚にソフトは置いていなかった。
私たちの中では、見本となるソフトのケースが陳列棚に無い以上、『そのソフトは売り切れである』というのが常識である。
だが、ここまできて諦めるのは口惜しい。私はハルに、一応店員に確認してみることを薦めた。ハルは意を決してカウンターに歩み寄った。
「すみませーん。ポケモンのプラチナってありますか?」
「申し訳ありません品切れです」
と答える店員の姿が私とハルの脳裏に浮かんだ。
ハルの後ろで私は、このあとお茶でもして帰るか、と今後の行動を組み立てていた。
しかし、その店員は私たちの予想を裏切った。
「はい、ありますよ。」
棚には確かに陳列されていなかったそれを、青年の店員はいとも容易く私達に掲げて見せたのだ。
私は驚いた。
ただの付き添いできた私がここまで驚いたのだ、買いに来た本人であるハルはもっと驚いただろう。
ハルは思わず店のカウンターに身を乗り出した。
「う”ぇっ!?Σ(゚д゚;) 」
ハルは確かにそう言った。
そのとき私の目にはハルの後ろ姿しか写っていなかったが、ハルがどんな表情をしていたのか想像するのは容易だった。
私はハルの喜ぶよりまず驚いたその反応に思わず笑ってしまった。
前には驚いたまま購入を希望する女、その後ろには腹を抱えて笑う女。
店員の表情は確実に奇妙な物をみるそれに変わる。
無事に購入を終えた後もハルは
「これで中身が違ったらどうしよう」
と一人、言い知れない不安と猜疑心を抱えていた。
私たちはその後、向かいのコーヒーショップに寄り道した。
互いに注文した物を受け取り、席についてほっと一息いれたところで、ハルは袋をあけ、確実に自分が求めていた物であるということを確認し、ようやく笑ってみせた。
そのまま私たちは短い時間の中で、今後の大学生活を想像して愁い、このまま悠久の時を過ごしたいという思いを抱えながら店を出た。
ハルを家の近くまで送り、私も家に着いた。
まだ客人たちは楽しげに歓談している。
私はそのうちの一人を車で送るためにもうしばらく起きていなければならない。
酒に酔った人間への対応と明日から始まる後期の大学生活を考えると思わずため息が漏れる。
そして、大学のホームページを見て、私は明日講義が無いことを知るのであった。
----
はい、というわけでした。この物語はノンフィクションです。
憂鬱だった祝日が非常に楽しい物に変わりました。(笑)
これからも遠慮しないで電話かけんしゃい、ハル。
title song by GARNET CROW -夢のひとつ-
夜明けが来ると確かめたら帰るんだ
2008年8月20日 SS「花火をするぞ!来なかったら摂政チョップだからな!」
という一言から全部始まった。
すっぽかしたかったけど、あの妙な攻撃を喰らったり、翌日すねて仕事をまたサボられると困るので付き合うことにした。
「で、花火ってこれですか太子。」
夏の風物詩を一気に満喫したい。と、どうしようもなく子供染みたわがまままで言い出したので仕方なく馬にのって海辺まで来た。急遽竹中さんと調子丸君も誘うことになり、いつの間にか話が大きくなっている。
後ろに太子を乗せて黒駒で海岸まで来れた調子丸君にびっくりだ。
そしていざ始めようとした時に、太子が取り出したのはたった数本の線香花火。
「線香花火だって立派な花火だぞ妹子!」
「そりゃまぁそうでしょうけど、始まりから締めまで線香花火じゃ虚しくなるだけじゃないですか。」
「そ、そんなことないわい!お前は風流さというものがわかって無いな!」
と言われても、葉月も半ばを過ぎれば季節もすでに次のステップに入ってるもので、昼間は伴侶を必死で求めるセミの声が聞こえ、夜になれば鈴虫の声が聞こえる。
正直、季節感は混沌としていてわかりにくい時期だ。
「って、太子!そっち火をつけるほうじゃなくて持つほうですよ!!」
「うそっ!?うわっあちち。ちくしょー、わかりにくいんだよこれ。」
僕の声に驚いた太子が思わず手を離す。
落ちかけたそれを反射的に取ろうとして火が付きかけた部分を思いっきり握ったようだ。そりゃ熱い。ついでにまどろっこしい。
僕は太子からマッチと花火を受け取り代わりに火をつけた。
…つけようとした。
「…太子。湿気ってませんかこの花火。」
「マジで?!ガーン!や、やっぱり使い古したティーバックと一緒にポッケに入れてたのがまずかったのか?」
「アンタまだそれ入れてたの?!捨てろっつったでしょアホが!!」
つまり僕は未知なる物が詰まっているポケットの中身の一部を掴んでしまったわけだ。マッチ含む。
最初に気付かなかった僕にも落ち度はあるとはいえ、今すぐ石鹸で手を洗いたい。そしてアルコール殺菌をしたい。
「チクショー!こうなったら星見だ星見!!ほら、寝っ転がれ妹子!!」
「嫌ですよ、敷物もなしに砂だらけにな…って、うわっ、ちょっちょっと!!」
何のためらいも無くその場で仰向けになったかと思えば、太子の意外に長いリーチの腕に捕まり引っ張られる。まさかの不意打ちに僕はバランスを崩した。
せめて顔面直撃は間逃れたいので無理やり体を捻って背中を打つ。くそ、微妙に痛かったぞ。
「ほらみろーすごい綺麗だぞ。」
「はいはい。」
いつも通りのマイペースさをいつも通りうまく御しきれない。
ため息混じりに僕は空を見上げた。
「…確かに綺麗ですね。」
「しかし、花火ちくしょう…。」
「聞いちゃいねえ。また来年にでもやればいいでしょう。」
「馬鹿だなー妹子は。」
他の誰になんと言われようと構わない。
だが、この人にこの言葉を言われるのはものすごく不快だ。腹立たしい。腸が煮えくり返る。
だけど、一言突っ込む前に言われた太子の言葉に、僕は完全にタイミングを見失った。
「来年もまた同じように過ごせるとは限らないだろ?」
「…え…」
僕は思わずアホ面で夜空を見上げている太子の横顔を盗み見た。
「もしかしたら来年は調子丸が本当にその名の通りに調子がよくなって、何かの世界選手権で遠征に行ってるかもしれないし、あるいは竹中さんが墨汁戦隊スミレンジャーの任務でどこかに出張してるかもしれないだろ?」
「アンタのそのトチ狂った妄想力は何処から来るんだ!!」
「あ、でもそっちの場合はお前も行かないとな、ブラック。」
「行きませんよ!!そもそもその戦隊の一員になった覚えもありません!!」
正直、僕は太子のこういう所が嫌いだ。
さりげなく言った一言がすごく深くて重い気がする。
そしてたった一言のそれに反応してしまって、一瞬の間に色々なことを想像してしまう。
元々ポジティブな思考じゃない。
だから、少なくとも太子よりは現実的な未来図のそれはあまりいいものではない。
在り得ないわけではないそれを思い描いて妙に苦しくなる。
だけど、僕をそんな風にさせておきながら、言った本人は救いようの無いただのアホだった。
正確に言えば太子のこういうことにいちいち反応してしまう僕のこの性格が嫌いだ。
「なぁ妹子、あの一際綺麗な星ってなんていうんだ?」
ほら、今だってもう別の事を考えてる。
「さぁ。元々僕は星に詳しくありませんし。名前の無い星の方が圧倒的に多いですから。」
「むー。よし、なら私が名づけるぞ。」
「止めてください。誰が呼ぶんですかその名を。」
「私と妹子だ。」
「いやですよ。」
「なんだよ、ノリが悪いぞ!」
太子はそこで一度上半身だけ起こして僕を見た。
口を尖らせて言うその表情はあまりにも年不相応で気色悪い。
「じゃぁ特別に妹子に名づけさせてやる!ほら、ちゃんとよく見て考えろ!」
と言いながら太子は空を指差した。
「太子。今指差してる星、さっきのと違いますよ。」
「えっ?!うそ!?あれ、どこ行った!!?」
僕がそういうと太子は慌てて立ち上がって周囲を見回した。
たぶん、この人の記憶力じゃ再び同じ物を見つけるのは無理だろう。
「お前も探せ妹子!」
もし、今流れ星が流れたら、『太子のアホが治りますように』と願うより、『この人がこの人のままでありますように』と願ってしまうかもしれない。
結局また太子のマイペースに巻き込まれてしまっている自分がいた。
Love Lone Star 名前も無いまま何光年旅をしたの?
Love Lone Star 目を凝らして探す僕らが此処に居るよ
Love Lone Star 僕らの大切な星だけどとても遠い
Love Lone Star 目印の無い二人だけの秘密の星
---
不完全燃焼。
書きやすそうとか言っておきながら書きにくかった。
というより自分で書きにくくしちゃった。あぼん。
線香花火の付け間違えは昔よくやった。
song by GARNET CROW『Love Lone Star』
という一言から全部始まった。
すっぽかしたかったけど、あの妙な攻撃を喰らったり、翌日すねて仕事をまたサボられると困るので付き合うことにした。
「で、花火ってこれですか太子。」
夏の風物詩を一気に満喫したい。と、どうしようもなく子供染みたわがまままで言い出したので仕方なく馬にのって海辺まで来た。急遽竹中さんと調子丸君も誘うことになり、いつの間にか話が大きくなっている。
後ろに太子を乗せて黒駒で海岸まで来れた調子丸君にびっくりだ。
そしていざ始めようとした時に、太子が取り出したのはたった数本の線香花火。
「線香花火だって立派な花火だぞ妹子!」
「そりゃまぁそうでしょうけど、始まりから締めまで線香花火じゃ虚しくなるだけじゃないですか。」
「そ、そんなことないわい!お前は風流さというものがわかって無いな!」
と言われても、葉月も半ばを過ぎれば季節もすでに次のステップに入ってるもので、昼間は伴侶を必死で求めるセミの声が聞こえ、夜になれば鈴虫の声が聞こえる。
正直、季節感は混沌としていてわかりにくい時期だ。
「って、太子!そっち火をつけるほうじゃなくて持つほうですよ!!」
「うそっ!?うわっあちち。ちくしょー、わかりにくいんだよこれ。」
僕の声に驚いた太子が思わず手を離す。
落ちかけたそれを反射的に取ろうとして火が付きかけた部分を思いっきり握ったようだ。そりゃ熱い。ついでにまどろっこしい。
僕は太子からマッチと花火を受け取り代わりに火をつけた。
…つけようとした。
「…太子。湿気ってませんかこの花火。」
「マジで?!ガーン!や、やっぱり使い古したティーバックと一緒にポッケに入れてたのがまずかったのか?」
「アンタまだそれ入れてたの?!捨てろっつったでしょアホが!!」
つまり僕は未知なる物が詰まっているポケットの中身の一部を掴んでしまったわけだ。マッチ含む。
最初に気付かなかった僕にも落ち度はあるとはいえ、今すぐ石鹸で手を洗いたい。そしてアルコール殺菌をしたい。
「チクショー!こうなったら星見だ星見!!ほら、寝っ転がれ妹子!!」
「嫌ですよ、敷物もなしに砂だらけにな…って、うわっ、ちょっちょっと!!」
何のためらいも無くその場で仰向けになったかと思えば、太子の意外に長いリーチの腕に捕まり引っ張られる。まさかの不意打ちに僕はバランスを崩した。
せめて顔面直撃は間逃れたいので無理やり体を捻って背中を打つ。くそ、微妙に痛かったぞ。
「ほらみろーすごい綺麗だぞ。」
「はいはい。」
いつも通りのマイペースさをいつも通りうまく御しきれない。
ため息混じりに僕は空を見上げた。
「…確かに綺麗ですね。」
「しかし、花火ちくしょう…。」
「聞いちゃいねえ。また来年にでもやればいいでしょう。」
「馬鹿だなー妹子は。」
他の誰になんと言われようと構わない。
だが、この人にこの言葉を言われるのはものすごく不快だ。腹立たしい。腸が煮えくり返る。
だけど、一言突っ込む前に言われた太子の言葉に、僕は完全にタイミングを見失った。
「来年もまた同じように過ごせるとは限らないだろ?」
「…え…」
僕は思わずアホ面で夜空を見上げている太子の横顔を盗み見た。
「もしかしたら来年は調子丸が本当にその名の通りに調子がよくなって、何かの世界選手権で遠征に行ってるかもしれないし、あるいは竹中さんが墨汁戦隊スミレンジャーの任務でどこかに出張してるかもしれないだろ?」
「アンタのそのトチ狂った妄想力は何処から来るんだ!!」
「あ、でもそっちの場合はお前も行かないとな、ブラック。」
「行きませんよ!!そもそもその戦隊の一員になった覚えもありません!!」
正直、僕は太子のこういう所が嫌いだ。
さりげなく言った一言がすごく深くて重い気がする。
そしてたった一言のそれに反応してしまって、一瞬の間に色々なことを想像してしまう。
元々ポジティブな思考じゃない。
だから、少なくとも太子よりは現実的な未来図のそれはあまりいいものではない。
在り得ないわけではないそれを思い描いて妙に苦しくなる。
だけど、僕をそんな風にさせておきながら、言った本人は救いようの無いただのアホだった。
正確に言えば太子のこういうことにいちいち反応してしまう僕のこの性格が嫌いだ。
「なぁ妹子、あの一際綺麗な星ってなんていうんだ?」
ほら、今だってもう別の事を考えてる。
「さぁ。元々僕は星に詳しくありませんし。名前の無い星の方が圧倒的に多いですから。」
「むー。よし、なら私が名づけるぞ。」
「止めてください。誰が呼ぶんですかその名を。」
「私と妹子だ。」
「いやですよ。」
「なんだよ、ノリが悪いぞ!」
太子はそこで一度上半身だけ起こして僕を見た。
口を尖らせて言うその表情はあまりにも年不相応で気色悪い。
「じゃぁ特別に妹子に名づけさせてやる!ほら、ちゃんとよく見て考えろ!」
と言いながら太子は空を指差した。
「太子。今指差してる星、さっきのと違いますよ。」
「えっ?!うそ!?あれ、どこ行った!!?」
僕がそういうと太子は慌てて立ち上がって周囲を見回した。
たぶん、この人の記憶力じゃ再び同じ物を見つけるのは無理だろう。
「お前も探せ妹子!」
もし、今流れ星が流れたら、『太子のアホが治りますように』と願うより、『この人がこの人のままでありますように』と願ってしまうかもしれない。
結局また太子のマイペースに巻き込まれてしまっている自分がいた。
Love Lone Star 名前も無いまま何光年旅をしたの?
Love Lone Star 目を凝らして探す僕らが此処に居るよ
Love Lone Star 僕らの大切な星だけどとても遠い
Love Lone Star 目印の無い二人だけの秘密の星
---
不完全燃焼。
書きやすそうとか言っておきながら書きにくかった。
というより自分で書きにくくしちゃった。あぼん。
線香花火の付け間違えは昔よくやった。
song by GARNET CROW『Love Lone Star』
over 25℃ summer day
2008年7月12日 SS コメント (1)不思議な人なんだと思う。
目上の人にはもちろんだけど、年下の人にも敬語を使うし。
芭蕉先生だけはなぜか「さん」付けで呼ぶ。そして噂では授業態度も普段からは想像もできないほどアレらしい。
(そういえば前に泣きながら歩いている芭蕉先生をみた気がする。)
そして。
「妹子さん。」
「あ、こんにちは曽良先輩。」
生徒会長である太子を通じて知り合った、同じく生徒会の書記の曽良先輩は、僕が図書委員の当番のときの放課後に必ず図書室に来る。
「昨日薦めてもらった本を返しに来ました。」
「え?!もう読まれたんですか!」
バリバリの文系らしい先輩の速読には恐れ入る。
僕が読み解くのに4日かかった本を今日みたいに1日足らずで読破するなんていつものことだ。
それも流し読みじゃなく、その本を、必要と在らばかいつまんで判りやすく解説できるほど内容が頭に入っているレベル。
著者のグダグダした後書きなんかよりよほどためになることも多い。
「なかなかおもしろかったです。」
「それはよかったです。この作者のシリーズは僕のお気に入りなんで…。」
返却確認のスタンプを押しながら短い会話を交わす。綺麗に押せたことに小さく満足して先輩に視線を合わせた。
「そうだ、河合せんぱ」
「名前。」
「す、すみません。」
初めて会ったときも、先輩を苗字で呼んだら訂正された。
太子の話だと幼少の時にご両親が亡くなって親戚に引き取られた時に苗字が変わり、さらにその親戚も亡くなって別の家に回され再び苗字が変わってしまったため、苗字そのものにあまり馴染めないらしい。
(だけど今のはちょっと、かなり怖かった。)
「それであの、実はこの著者の新作が今日入ったんですけど、先輩読まれますか?」
本当ならその日入ったばかりの本は翌日以降からの公開になる。
だけど、なんとなく先輩には早く読んで欲しくて僕は後ろの委員以外触れない書架から新品の本を取り出した。
「いいんですか?」
「はい。」
「…ありがとうございます。」
あ。笑った。
前に芭蕉先生は『曽良くんは海の日じゃないと笑わない』と意味不明なことを言っていたけどそんなこと無いと思う。最近は特に。
「そういえば。」
「はい?」
「今日の昼休みまた太子さんが逃げ出しました。」
「げ!またですか?!あぁもう、あの馬鹿!!…その、なんかすみません…。」
どうしてあんな人が会長になれたんだろう。学校の七不思議の中の一つに入っても過言じゃない、絶対に。
「なぜ妹子さんが謝るんですか。」
「え?あぁいえ、なんかなんとなく謝らなきゃならない気がして…。昔からそうだったんです。太子の悪戯に付き合わされて最終的に怒られるのも謝るのも僕だったんで。」
「そう、ですか。」
「あ、でも今度居なくなったときは屋上とか探してみるといいですよ、あの人ああいう場所好きですし。」
「そうなんですか。」
僕と先輩以外この場所に居なかったからか僕は声量を抑えるのを忘れていた。
「それから、最近校庭の隅っこのほうに野良猫が住み着いてるの知ってますか?」
「いえ。」
「あの馬鹿あれで結構動物好きなんでそこに逃げてるかもしれません。」
先輩から太子の話題が出てきて、僕はいつの間にか勝手にべらべら話していた。
愚痴交じりのそれにも先輩は一つ一つちゃんと相槌をうってくれる。
「…よく知ってるんですね。太子さんの事。」
「えぇまあ。あの人とは幼馴染と言う名の腐れ縁ですから。…自然とそうなってしまったというか…。」
僕はこのとき先輩の眉間が動いたことに気付かなかった。
「妹子さん。」
「はい。」
「今日はもう委員の仕事は終わりですか?」
「はい。この返却された本を棚に戻せば終わりです。」
「手伝いますから一緒に帰りましょう。」
僕が止める前に曽良先輩は無駄の無い動作で僕から数冊の本を抜き取り、番号を確認しながら書棚に向かった。
「あ、あのせんぱ」
「妹子とは本の趣味が合うのでゆっくり話しながら帰りたいんです。」
「え、はい…え?あれ?」
…今呼び捨てにされた?
「なんなら僕の事を曽良って呼んでも構いません。」
心読まれた!
結局僕たちはその後、本以外の事もたくさん話して帰った。
夏の夕暮れに並んだ足跡 不揃いな影がほら 気だるく揺れてる
二人同じ時を過ごしたからもっとその先のほうへ手を伸ばしたくなる
----
夢見すぎ。あれだ、あまりに暑くて脳に蛆か何か沸いてしまったんだ。
もうニコ動の影響で曽妹が。
ピンだと竹中さん好きなんだけど、CPになるとどうしても妹子受け贔屓になるを…!
自分的日和学パロ設定
太子→3年生徒会長。妹子とは幼馴染なので呼び捨てにさせてる。
曽良→3年生徒会書記。太子とクラスメイト。
妹子→2年生図書委員。登下校のときは大抵太子がくっついてくる。
芭蕉さん→古典担当。太子のクラスの担任。
ちなみに曽良の両親が〜の辺りはちょっと史実を意識してみたりしなかったり。
song by GARNET CROW -雨上がりのBlue-
目上の人にはもちろんだけど、年下の人にも敬語を使うし。
芭蕉先生だけはなぜか「さん」付けで呼ぶ。そして噂では授業態度も普段からは想像もできないほどアレらしい。
(そういえば前に泣きながら歩いている芭蕉先生をみた気がする。)
そして。
「妹子さん。」
「あ、こんにちは曽良先輩。」
生徒会長である太子を通じて知り合った、同じく生徒会の書記の曽良先輩は、僕が図書委員の当番のときの放課後に必ず図書室に来る。
「昨日薦めてもらった本を返しに来ました。」
「え?!もう読まれたんですか!」
バリバリの文系らしい先輩の速読には恐れ入る。
僕が読み解くのに4日かかった本を今日みたいに1日足らずで読破するなんていつものことだ。
それも流し読みじゃなく、その本を、必要と在らばかいつまんで判りやすく解説できるほど内容が頭に入っているレベル。
著者のグダグダした後書きなんかよりよほどためになることも多い。
「なかなかおもしろかったです。」
「それはよかったです。この作者のシリーズは僕のお気に入りなんで…。」
返却確認のスタンプを押しながら短い会話を交わす。綺麗に押せたことに小さく満足して先輩に視線を合わせた。
「そうだ、河合せんぱ」
「名前。」
「す、すみません。」
初めて会ったときも、先輩を苗字で呼んだら訂正された。
太子の話だと幼少の時にご両親が亡くなって親戚に引き取られた時に苗字が変わり、さらにその親戚も亡くなって別の家に回され再び苗字が変わってしまったため、苗字そのものにあまり馴染めないらしい。
(だけど今のはちょっと、かなり怖かった。)
「それであの、実はこの著者の新作が今日入ったんですけど、先輩読まれますか?」
本当ならその日入ったばかりの本は翌日以降からの公開になる。
だけど、なんとなく先輩には早く読んで欲しくて僕は後ろの委員以外触れない書架から新品の本を取り出した。
「いいんですか?」
「はい。」
「…ありがとうございます。」
あ。笑った。
前に芭蕉先生は『曽良くんは海の日じゃないと笑わない』と意味不明なことを言っていたけどそんなこと無いと思う。最近は特に。
「そういえば。」
「はい?」
「今日の昼休みまた太子さんが逃げ出しました。」
「げ!またですか?!あぁもう、あの馬鹿!!…その、なんかすみません…。」
どうしてあんな人が会長になれたんだろう。学校の七不思議の中の一つに入っても過言じゃない、絶対に。
「なぜ妹子さんが謝るんですか。」
「え?あぁいえ、なんかなんとなく謝らなきゃならない気がして…。昔からそうだったんです。太子の悪戯に付き合わされて最終的に怒られるのも謝るのも僕だったんで。」
「そう、ですか。」
「あ、でも今度居なくなったときは屋上とか探してみるといいですよ、あの人ああいう場所好きですし。」
「そうなんですか。」
僕と先輩以外この場所に居なかったからか僕は声量を抑えるのを忘れていた。
「それから、最近校庭の隅っこのほうに野良猫が住み着いてるの知ってますか?」
「いえ。」
「あの馬鹿あれで結構動物好きなんでそこに逃げてるかもしれません。」
先輩から太子の話題が出てきて、僕はいつの間にか勝手にべらべら話していた。
愚痴交じりのそれにも先輩は一つ一つちゃんと相槌をうってくれる。
「…よく知ってるんですね。太子さんの事。」
「えぇまあ。あの人とは幼馴染と言う名の腐れ縁ですから。…自然とそうなってしまったというか…。」
僕はこのとき先輩の眉間が動いたことに気付かなかった。
「妹子さん。」
「はい。」
「今日はもう委員の仕事は終わりですか?」
「はい。この返却された本を棚に戻せば終わりです。」
「手伝いますから一緒に帰りましょう。」
僕が止める前に曽良先輩は無駄の無い動作で僕から数冊の本を抜き取り、番号を確認しながら書棚に向かった。
「あ、あのせんぱ」
「妹子とは本の趣味が合うのでゆっくり話しながら帰りたいんです。」
「え、はい…え?あれ?」
…今呼び捨てにされた?
「なんなら僕の事を曽良って呼んでも構いません。」
心読まれた!
結局僕たちはその後、本以外の事もたくさん話して帰った。
夏の夕暮れに並んだ足跡 不揃いな影がほら 気だるく揺れてる
二人同じ時を過ごしたからもっとその先のほうへ手を伸ばしたくなる
----
夢見すぎ。あれだ、あまりに暑くて脳に蛆か何か沸いてしまったんだ。
もうニコ動の影響で曽妹が。
ピンだと竹中さん好きなんだけど、CPになるとどうしても妹子受け贔屓になるを…!
自分的日和学パロ設定
太子→3年生徒会長。妹子とは幼馴染なので呼び捨てにさせてる。
曽良→3年生徒会書記。太子とクラスメイト。
妹子→2年生図書委員。登下校のときは大抵太子がくっついてくる。
芭蕉さん→古典担当。太子のクラスの担任。
ちなみに曽良の両親が〜の辺りはちょっと史実を意識してみたりしなかったり。
song by GARNET CROW -雨上がりのBlue-
傷ついて泣いていた日もあった気がする 何かを信じようとして
2008年7月3日 SSその少女の目はただ粋然だった。
「天国…、天国…、あ、君は前科あるから地獄ね。」
今日は珍しく席を離れずに仕事をこなしていた。
たぶん昨日あまり役に立ったところを見たことが無い『閻魔七つ道具』を使ってサボろうとしたときに、いつもの倍以上に、詳しく言えば悪ゴメスさんに協力してもらって(ダメ元で頼んでみたら意外とあっさり承諾してくれた、案外根はいい人なのかもしれない。)お灸を据えたのが効いているのだと思う。
「どぅへ〜。ひょっと疲れた〜。」
「疲労の表現技法がよくわかりませんよ大王。大体毎日まじめに仕事してりゃいいんですよ。変態大王イカ。」
「今最後に辛辣なこと言わなかった?」
「言ってません。空耳ですよ。」
「そうか。」
―疑いもせずに信じやがったこのアホ。
「まぁでも、よく頑張りましたね。あと一人で今日の分は終わりです。さ、どうぞ次の方入ってください。」
机に突っ伏している大王を励ましリストのページをめくる。
大王も「よし頑張るよん」というぶん殴りたくなるような気合を入れて顔を上げた。
そして僕の呼びかけを聞いた今日最後の死人が大王の前に姿を見せる。
「え…。」
と大王の動きが止まった。
現れたのは、まだ幼い少女だった。
珍しいことではない。
地上で生きている物達に必ず訪れるそれは、別に定まった時期があるわけではないのだから。
その確率は低いとはいえ、転生してから間もない年月で再びこの地を訪れる事だってある。
「あ、えーと君は。」
大王は僕と同様にリストをめくる。
―享年5歳。交通事故。
同じ苗字の死人が来ていないから恐らくこの娘一人。
あるいは数日後に親族が来る可能性もある。
「えんまさん。」
大王が行き先を告げる前に少女が口を開いた。
「ん?なんだい。」
「わたしの舌を抜かないの?」
「えぇ!?抜かないよ!だって痛いじゃん!!」
―だっせぇ。
「お母さん言ってたもん。死んだらえんまだいおうに舌を抜かれるって。」
「舌を抜くのは悪いことをした人だけだよ。それに、それは単なる御伽噺だから本当に抜いたりはしない。」
大王が、自分の舌を引っこ抜かれたのを想像したのか小さく悲鳴を上げているのが見るに耐え切れなくて代わりに僕が答えた。
すると少女は大きな目を僕に向けて納得したかのように「ふ〜ん。」とだけ言った。
「それで、えんまさん。わたしはどっちにいくの?」
「え、もちろん天国だよ。お嬢ちゃんは何も悪いことしてないんだから。」
「でもこれからするかもしれないよ?『てんせい』っていうのをした後とかに。」
聡明な子なのかもしれない、と思った。それは知識とかそういう事じゃなくて、精神的な面で。あるいは大王より。
大王が押し黙った。
「そういう風に考えることが出来るなら、これから先も悪いことは出来ないと思うよ、君には。さぁ、そろそろ行く時間だよ。」
「うん、わかった。ねえ、えんまさん。」
僕は小さなその背中を軽く押した。
一歩二歩と階段を登ったところで少女は一度だけ立ち止まった。
「えんまさんはえんまさんじゃなくなったら何になるの?」
「俺はエンドレスフォーエバー閻魔大王さ!!」
「バカが移っちゃうから早く行ったほうがいいよ。」
「おおおお鬼男くん!」
親指を立て、舌をこう、イラッと来るようにペロッとだして答えた大王を見て僕はもう一度少女の背を押した。
少女はそれ以上何も言わず、立ち止まることも無く扉の中に入っていった。
「お疲れ様でした、閻…」
少女の姿が見えなくなったところで振り返ったとき、
閻魔大王は笑っていた。
僕が今まで見たことも無いようなそれは、なぜかいつか音を立てて壊れてしまうような気がした。
世界はまわると言うけれど何も私の中めぐるものなどないから
そっとただ窓の外眺め季節が移ろうのをみていましょう
----
なんだこの無駄にシリアス。おまえ明日面接じゃん!何死亡フラグたててるのっ。
-song by GARNET CROW 世界はまわると言うけれど-
★私信★
>>ハル
おめー書き込むの早ぇなおい(爆)
ニコ動での日和シリーズはみんな妄想力と技術力が逞しいから動悸が止まらないですよ。
もし第四期があるなら天国組はもちろん阿部さんとかもやって欲しい。そして是非竹ポンに戻ってきてもらいたい!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3361420
「天国…、天国…、あ、君は前科あるから地獄ね。」
今日は珍しく席を離れずに仕事をこなしていた。
たぶん昨日あまり役に立ったところを見たことが無い『閻魔七つ道具』を使ってサボろうとしたときに、いつもの倍以上に、詳しく言えば悪ゴメスさんに協力してもらって(ダメ元で頼んでみたら意外とあっさり承諾してくれた、案外根はいい人なのかもしれない。)お灸を据えたのが効いているのだと思う。
「どぅへ〜。ひょっと疲れた〜。」
「疲労の表現技法がよくわかりませんよ大王。大体毎日まじめに仕事してりゃいいんですよ。変態大王イカ。」
「今最後に辛辣なこと言わなかった?」
「言ってません。空耳ですよ。」
「そうか。」
―疑いもせずに信じやがったこのアホ。
「まぁでも、よく頑張りましたね。あと一人で今日の分は終わりです。さ、どうぞ次の方入ってください。」
机に突っ伏している大王を励ましリストのページをめくる。
大王も「よし頑張るよん」というぶん殴りたくなるような気合を入れて顔を上げた。
そして僕の呼びかけを聞いた今日最後の死人が大王の前に姿を見せる。
「え…。」
と大王の動きが止まった。
現れたのは、まだ幼い少女だった。
珍しいことではない。
地上で生きている物達に必ず訪れるそれは、別に定まった時期があるわけではないのだから。
その確率は低いとはいえ、転生してから間もない年月で再びこの地を訪れる事だってある。
「あ、えーと君は。」
大王は僕と同様にリストをめくる。
―享年5歳。交通事故。
同じ苗字の死人が来ていないから恐らくこの娘一人。
あるいは数日後に親族が来る可能性もある。
「えんまさん。」
大王が行き先を告げる前に少女が口を開いた。
「ん?なんだい。」
「わたしの舌を抜かないの?」
「えぇ!?抜かないよ!だって痛いじゃん!!」
―だっせぇ。
「お母さん言ってたもん。死んだらえんまだいおうに舌を抜かれるって。」
「舌を抜くのは悪いことをした人だけだよ。それに、それは単なる御伽噺だから本当に抜いたりはしない。」
大王が、自分の舌を引っこ抜かれたのを想像したのか小さく悲鳴を上げているのが見るに耐え切れなくて代わりに僕が答えた。
すると少女は大きな目を僕に向けて納得したかのように「ふ〜ん。」とだけ言った。
「それで、えんまさん。わたしはどっちにいくの?」
「え、もちろん天国だよ。お嬢ちゃんは何も悪いことしてないんだから。」
「でもこれからするかもしれないよ?『てんせい』っていうのをした後とかに。」
聡明な子なのかもしれない、と思った。それは知識とかそういう事じゃなくて、精神的な面で。あるいは大王より。
大王が押し黙った。
「そういう風に考えることが出来るなら、これから先も悪いことは出来ないと思うよ、君には。さぁ、そろそろ行く時間だよ。」
「うん、わかった。ねえ、えんまさん。」
僕は小さなその背中を軽く押した。
一歩二歩と階段を登ったところで少女は一度だけ立ち止まった。
「えんまさんはえんまさんじゃなくなったら何になるの?」
「俺はエンドレスフォーエバー閻魔大王さ!!」
「バカが移っちゃうから早く行ったほうがいいよ。」
「おおおお鬼男くん!」
親指を立て、舌をこう、イラッと来るようにペロッとだして答えた大王を見て僕はもう一度少女の背を押した。
少女はそれ以上何も言わず、立ち止まることも無く扉の中に入っていった。
「お疲れ様でした、閻…」
少女の姿が見えなくなったところで振り返ったとき、
閻魔大王は笑っていた。
僕が今まで見たことも無いようなそれは、なぜかいつか音を立てて壊れてしまうような気がした。
世界はまわると言うけれど何も私の中めぐるものなどないから
そっとただ窓の外眺め季節が移ろうのをみていましょう
----
なんだこの無駄にシリアス。おまえ明日面接じゃん!何死亡フラグたててるのっ。
-song by GARNET CROW 世界はまわると言うけれど-
★私信★
>>ハル
おめー書き込むの早ぇなおい(爆)
ニコ動での日和シリーズはみんな妄想力と技術力が逞しいから動悸が止まらないですよ。
もし第四期があるなら天国組はもちろん阿部さんとかもやって欲しい。そして是非竹ポンに戻ってきてもらいたい!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3361420
今日よりや書付消さん笠の露
2008年7月1日 SS コメント (1)「『夏草や じめっとしてて なにこれキモッ』芭蕉。」
「不快です。」
「一言でズバッと片付けないでよぉ!仕方ないじゃないか、最近スランプなんだから…。」
歩きながら周囲にあるものを見ては手当たり次第に句を詠み、そして悉く弟子の不評を買う。
ながら作業で歩く師の歩調はどうしても弟子のそれよりも遅い。
それでも初めの頃はそれなりに合わせて歩いていたが、己の句の出来栄えに半べそをかき始めた辺りから師弟の距離は確実に離れ始めていた。
「芭蕉さん。」
「なんだい曽良くん。」
すれ違う往来の人々を横目に前を歩く曽良が立ち止まって振り返った。筆と紙を手にしたまま芭蕉は視線を上げる。
「僕この先の茶屋で休んでますんで、どうぞごゆっくり。」
「えええ!?待ってよ!スランプの師匠置いていかんといて!鬼弟子!こういう時は師匠のために荷物持ってあげたりするものじゃないの?!」
「あの気味の悪い人形にでも慰めてもらえばいいじゃないですか。」
「マーフィ君を馬鹿にするなコラァ!マーフィ君はすごいんだぞ!つおい子なんだぞ!乱暴な弟子に何度ボロボロにされても私の側をずっと…!!ってあ”ぁ”〜もういねぇ!!」
半笑いで言われた言葉に芭蕉は筆を投げその場で座り込んだ。そして極めて限られた個人向け嗜好性が著しく強い愛玩人形を取り出し、ぎゅっと抱きしめる。
そのままその素晴らしさを改めて伝授しようと顔を上げた時にはもう既に弟子の姿は無かった。
「うぅ、まさか本当に先に行っちゃうなんて…。これじゃ一緒に旅してる感じがしないじゃないか…ん…?『一緒』に?」
赤子が愚図るようにすすり泣きながら服の裾の土を払って立ち上がる。ふっと師に沸いた疑問がその動作を停止させた。
―なんで曽良くんは私と一緒に旅してるんだろう。
「…後で聞いてみよ。」
***
「おや、案外早かったですね芭蕉さん。」
「うわぁ、ちょっと離れたただけなのに随分くつろいでたんだね、そのお団子何皿目?…まぁいいや、あ、あのね曽良くん。」
「なんですか。」
茶屋の野点傘の下で涼む曽良の前で芭蕉が一つ呼吸を置いた。
「な、なんで曽良くんは私と一緒に旅してるの?」
「あ?」
―『あ?』って言われたっ!
「だ、だって曽良くん、さっきみたいに先に行っちゃうし、おっかないし、師であるはずの私の事全然敬ってくれてないみたいだし、月謝とかも払ってくれないし…その、い、嫌だったら無理についてこなくても…」
「…。」
―ひぃぃ。めちゃくちゃ眉間に皺寄ってる!怖い!
弟子の静かなる形相に芭蕉は言葉をとめた。
対してその弟子は師の怯えた表情を真摯とも言えなくもないそれで見つめていた。
「…チッ、このクソヘタ男弱ジジイが。」
「たった一息でめちゃくちゃ酷い事言ったな!」
息が詰まるような沈黙の後にそう吐き捨てると、ショックを受けている芭蕉を他所に曽良は傘を被り、御代をその場に伏せ席を立った。
「そろそろ行きますよ芭蕉さん。」
「え、ちょっと待って!私まだ一服の『い』の字もしてない!松尾パンらはぎ!」
―どうしようもなく。バカだ。
この人が何気なく詠んだたった一つの句で、どれほど多くの人の心身体を動かしているのか。
自分が詠んだ句にどれほど大きな力があるのか。
この人自身が知らない。
そして僕も動かされたその一人で。
この人が創る、人を動かす句を詠む瞬間に立ち会いたいから。
そんなこと芭蕉さんの口が裂けても言わない。
「今なんか恐ろしいこと考えてなかった?!」
「いいえ。」
雲の峰いくつ崩れて月の山
「ちなみに月謝を払ってないのは単に払いたくないからです。」
「チクショォォ!!」
----
なっが。お前これもう本館のotherにうpしなおせよ。
あれだ、三人称で書くと長くなるんだきっと。
ところで色々芭蕉とか曽良の事調べてたらなんか私の中の妄想マシーンがすごいことになりそうですよ。
何気に曽良の過去が複雑な感じ。代表的な句もその生い立ちから来てるのか、とても切ない。
ちなみにタイトルは河合曽良が詠んだとされてる、松尾芭蕉との別れの句。
そういえば辞書で調べると曽良の『そ』の字が『曾』になってるけど漫画だと『曽』なんだよね。
「不快です。」
「一言でズバッと片付けないでよぉ!仕方ないじゃないか、最近スランプなんだから…。」
歩きながら周囲にあるものを見ては手当たり次第に句を詠み、そして悉く弟子の不評を買う。
ながら作業で歩く師の歩調はどうしても弟子のそれよりも遅い。
それでも初めの頃はそれなりに合わせて歩いていたが、己の句の出来栄えに半べそをかき始めた辺りから師弟の距離は確実に離れ始めていた。
「芭蕉さん。」
「なんだい曽良くん。」
すれ違う往来の人々を横目に前を歩く曽良が立ち止まって振り返った。筆と紙を手にしたまま芭蕉は視線を上げる。
「僕この先の茶屋で休んでますんで、どうぞごゆっくり。」
「えええ!?待ってよ!スランプの師匠置いていかんといて!鬼弟子!こういう時は師匠のために荷物持ってあげたりするものじゃないの?!」
「あの気味の悪い人形にでも慰めてもらえばいいじゃないですか。」
「マーフィ君を馬鹿にするなコラァ!マーフィ君はすごいんだぞ!つおい子なんだぞ!乱暴な弟子に何度ボロボロにされても私の側をずっと…!!ってあ”ぁ”〜もういねぇ!!」
半笑いで言われた言葉に芭蕉は筆を投げその場で座り込んだ。そして極めて限られた個人向け嗜好性が著しく強い愛玩人形を取り出し、ぎゅっと抱きしめる。
そのままその素晴らしさを改めて伝授しようと顔を上げた時にはもう既に弟子の姿は無かった。
「うぅ、まさか本当に先に行っちゃうなんて…。これじゃ一緒に旅してる感じがしないじゃないか…ん…?『一緒』に?」
赤子が愚図るようにすすり泣きながら服の裾の土を払って立ち上がる。ふっと師に沸いた疑問がその動作を停止させた。
―なんで曽良くんは私と一緒に旅してるんだろう。
「…後で聞いてみよ。」
***
「おや、案外早かったですね芭蕉さん。」
「うわぁ、ちょっと離れたただけなのに随分くつろいでたんだね、そのお団子何皿目?…まぁいいや、あ、あのね曽良くん。」
「なんですか。」
茶屋の野点傘の下で涼む曽良の前で芭蕉が一つ呼吸を置いた。
「な、なんで曽良くんは私と一緒に旅してるの?」
「あ?」
―『あ?』って言われたっ!
「だ、だって曽良くん、さっきみたいに先に行っちゃうし、おっかないし、師であるはずの私の事全然敬ってくれてないみたいだし、月謝とかも払ってくれないし…その、い、嫌だったら無理についてこなくても…」
「…。」
―ひぃぃ。めちゃくちゃ眉間に皺寄ってる!怖い!
弟子の静かなる形相に芭蕉は言葉をとめた。
対してその弟子は師の怯えた表情を真摯とも言えなくもないそれで見つめていた。
「…チッ、このクソヘタ男弱ジジイが。」
「たった一息でめちゃくちゃ酷い事言ったな!」
息が詰まるような沈黙の後にそう吐き捨てると、ショックを受けている芭蕉を他所に曽良は傘を被り、御代をその場に伏せ席を立った。
「そろそろ行きますよ芭蕉さん。」
「え、ちょっと待って!私まだ一服の『い』の字もしてない!松尾パンらはぎ!」
―どうしようもなく。バカだ。
この人が何気なく詠んだたった一つの句で、どれほど多くの人の心身体を動かしているのか。
自分が詠んだ句にどれほど大きな力があるのか。
この人自身が知らない。
そして僕も動かされたその一人で。
この人が創る、人を動かす句を詠む瞬間に立ち会いたいから。
そんなこと芭蕉さんの口が裂けても言わない。
「今なんか恐ろしいこと考えてなかった?!」
「いいえ。」
雲の峰いくつ崩れて月の山
「ちなみに月謝を払ってないのは単に払いたくないからです。」
「チクショォォ!!」
----
なっが。お前これもう本館のotherにうpしなおせよ。
あれだ、三人称で書くと長くなるんだきっと。
ところで色々芭蕉とか曽良の事調べてたらなんか私の中の妄想マシーンがすごいことになりそうですよ。
何気に曽良の過去が複雑な感じ。代表的な句もその生い立ちから来てるのか、とても切ない。
ちなみにタイトルは河合曽良が詠んだとされてる、松尾芭蕉との別れの句。
そういえば辞書で調べると曽良の『そ』の字が『曾』になってるけど漫画だと『曽』なんだよね。
まっすぐな目で、笑った。
2008年6月1日 SS昼休みが終わる10分位前。
―そろそろだ。
俺がそう思ったと同時に、後方でドアが開く音が聞こえた。
どうやったらヒールでそんな荒くて力強い足音が出せるのか、いつも不思議でしょうがない。
「こんにちは、サボり魔先生。」
「む。違います、天気がいいから日向ぼっこに来ただけ。」
「あんたってさ、なんで冗談だってのにいちいち反応するの?
…ま、俺はそのほうが楽しいし面白いからいいんだけど。」
風に揺れる淡い色の髪を押さえながら先生は、また俺の言ったことに反応してムッとした顔で俺をにらみつけていた。
風の音に紛れて聞こえなかった先生の口はたぶん『意地悪だなもう』とか言っていたんだろう。
フェンスの側に居た俺の横に立ち、背筋を伸ばして思い切りよく空気を吸って、吐く。
腹が立つくらい無防備だ。
「先生。」
「なぁに、綾芽君。」
淡い大きな瞳を俺のほうに向ける。
俺は、この瞳をずっと昔から知っていたような気がした。
「あんた、警戒心ってものないわけ?」
「え?」
「『え?』じゃない。俺は、ここで嫌がるあんたに無理やりキスした。なのにあんたはまた、そんな能天気な顔して俺の横に立ってる。」
ここでまた先生の表情が不貞腐れたように歪んだ。
だけどそれは俺が過去にした行為に対してじゃなくて、たった今言った『能天気』という言葉に対してだと思う。
先生は暫く首をかしげて考えたあと口を開いた。
「だって綾芽君が無理やり同じことするようには思えないもの。」
「根拠は?」
「綾芽君だから。」
…頭悪いんじゃないのか、と一瞬でも思ったなんて先生に知られたら大変だ。
「私にそういう意地悪な事言っても、心の中では静音ちゃんの事心配してるんでしょう?」
突然の先生の言葉にフェンスを掴んでいた握力が強くなった。
「今日、静音ちゃんの病院行くんだよね?」
「…あぁ。」
「怖い?」
「…怖くない。」
「嘘。」
先生は空いている俺の手を握った。
―あぁ、そういえばあの時も、初めてロゴスを解放したときもこんな風だった。
「私の前では泣いていいから。…ね。」
「…誰が泣くかバーカ。」
俺の大好きな優しい声で、もう一度しっかりと俺の手を両手で握ってくれた先生の顔を何故か見ることが出来なかった。
悔しいのか情けないのか嬉しいのか恥ずかしいのか、さっぱりわからない。
ただひとつ確かなのは、この人が側に居るだけで、俺が俺で居られるということだった。
時空超えてゆけたら 迷わず君のもと
離れずに終わりを見つめさせて
哀しみを祈りで癒せないなら共にその痛みを受けさせて
一人泣くことなどないように
君よどうか幸せでいて、と忘れないで願っているよ
届かないと知りながらも祈る
一人泣いてる君を思い 近く遠い同じこの街で
触れることさえ出来ないで居るそんなWEEK END
情けなくも愛しい思いだけ抱いたWEEK END
song by GARNET CROW-『the first cry&WEEKEND』-
----
ゲームは昨日から触ってない。ただ殴り書きたかったから書いただけ。
綾芽の存在はストーリー中盤辺りからなんかほっとできた。
★私信★
>>ハル
おう、疲れたぜ(笑)
次の話終わったら終わりにしよう、と言い聞かせても展開が気になってしょうがないからぶっ続けでやりたい。
だけどストーリーの重さに精力が尽きる。
すげぇよこのゲーム。
今度デュエルラブと一緒に貸しますよ、2つのゲームのテンションの差に笑ってください。
―そろそろだ。
俺がそう思ったと同時に、後方でドアが開く音が聞こえた。
どうやったらヒールでそんな荒くて力強い足音が出せるのか、いつも不思議でしょうがない。
「こんにちは、サボり魔先生。」
「む。違います、天気がいいから日向ぼっこに来ただけ。」
「あんたってさ、なんで冗談だってのにいちいち反応するの?
…ま、俺はそのほうが楽しいし面白いからいいんだけど。」
風に揺れる淡い色の髪を押さえながら先生は、また俺の言ったことに反応してムッとした顔で俺をにらみつけていた。
風の音に紛れて聞こえなかった先生の口はたぶん『意地悪だなもう』とか言っていたんだろう。
フェンスの側に居た俺の横に立ち、背筋を伸ばして思い切りよく空気を吸って、吐く。
腹が立つくらい無防備だ。
「先生。」
「なぁに、綾芽君。」
淡い大きな瞳を俺のほうに向ける。
俺は、この瞳をずっと昔から知っていたような気がした。
「あんた、警戒心ってものないわけ?」
「え?」
「『え?』じゃない。俺は、ここで嫌がるあんたに無理やりキスした。なのにあんたはまた、そんな能天気な顔して俺の横に立ってる。」
ここでまた先生の表情が不貞腐れたように歪んだ。
だけどそれは俺が過去にした行為に対してじゃなくて、たった今言った『能天気』という言葉に対してだと思う。
先生は暫く首をかしげて考えたあと口を開いた。
「だって綾芽君が無理やり同じことするようには思えないもの。」
「根拠は?」
「綾芽君だから。」
…頭悪いんじゃないのか、と一瞬でも思ったなんて先生に知られたら大変だ。
「私にそういう意地悪な事言っても、心の中では静音ちゃんの事心配してるんでしょう?」
突然の先生の言葉にフェンスを掴んでいた握力が強くなった。
「今日、静音ちゃんの病院行くんだよね?」
「…あぁ。」
「怖い?」
「…怖くない。」
「嘘。」
先生は空いている俺の手を握った。
―あぁ、そういえばあの時も、初めてロゴスを解放したときもこんな風だった。
「私の前では泣いていいから。…ね。」
「…誰が泣くかバーカ。」
俺の大好きな優しい声で、もう一度しっかりと俺の手を両手で握ってくれた先生の顔を何故か見ることが出来なかった。
悔しいのか情けないのか嬉しいのか恥ずかしいのか、さっぱりわからない。
ただひとつ確かなのは、この人が側に居るだけで、俺が俺で居られるということだった。
時空超えてゆけたら 迷わず君のもと
離れずに終わりを見つめさせて
哀しみを祈りで癒せないなら共にその痛みを受けさせて
一人泣くことなどないように
君よどうか幸せでいて、と忘れないで願っているよ
届かないと知りながらも祈る
一人泣いてる君を思い 近く遠い同じこの街で
触れることさえ出来ないで居るそんなWEEK END
情けなくも愛しい思いだけ抱いたWEEK END
song by GARNET CROW-『the first cry&WEEKEND』-
----
ゲームは昨日から触ってない。ただ殴り書きたかったから書いただけ。
綾芽の存在はストーリー中盤辺りからなんかほっとできた。
★私信★
>>ハル
おう、疲れたぜ(笑)
次の話終わったら終わりにしよう、と言い聞かせても展開が気になってしょうがないからぶっ続けでやりたい。
だけどストーリーの重さに精力が尽きる。
すげぇよこのゲーム。
今度デュエルラブと一緒に貸しますよ、2つのゲームのテンションの差に笑ってください。
―今夜7時校門前の交差点。
いつも通り桔梗ちゃんの郵便係になっていたせんせにそれだけ告げて、確かにせんせはそれに頷いていた。
俺は無論の事時間丁度にその場所に居る。仕事はきっと今頃桔梗が怖いほどの笑顔で引き受けてくれてるだろ。
俺がせんせと約束をすれば何故かそれは自然と桔梗に伝わる。
だから時間オーバーしそうになってもなんだかんだで桔梗がフォローをいれるから、大抵約束の時間にせんせは来る。
遅れたとしても精々5分程度。
だから車のディスプレイに表示された時刻が7:30を告げていたのを見て、俺は『何かあったんだ』と確信した。
何本目かわからないタバコを押しつぶしたところで助手席の窓が叩かれる。俺は腕を伸ばしてドアのロックを外した。
「遅れてすみません葵理事。書類の整理が長引いてしまって…」
開けたドアの向こうでせんせが申し訳なさそうに言う。
その表情には確かに焦燥と動揺が含まれていた。ほんと、わかりやすい。
「まー、いいからさっさと乗れよ。」
そういうと怖ず怖ずと華奢な体を折って助手席に座る。
うん、俺がもう何も言わずにシートベルト締めるようになった。いい子いい子。
「葵理事…?」
いつまでたっても車を発進させない俺を不思議そうにせんせが見つめた。ばれてないと思ってるのか、こいつは。
「セブンライト。」
仄かに匂っていたタバコの銘柄を言い当てるとせんせの体がピクリと揺れる。
「やっぱり兄貴に捕まったのか。」
俺はため息混じりに言った。
「どうして俺にすぐ電話でもメールでも寄越さなかった。」
「…だって紫陽さん、ともゑ君を連れ出して裏庭にいるだなんて電話で言ってきたから…結局嘘だったんですけど」
「はいストップ。」
俺は自分の人差し指をせんせの唇に押し当てた。
「せんせはバカだね。男と二人っきりのときに別の男の話なんてするもんじゃないぜ。」
兄貴に会っていた。そのことに対する俺の中でふっと沸いたものは、嫉妬とか言う単純で有り触れたものじゃない。
いっそそれで片付けられるのなら大助かりだ。
それはロゴスだと、自覚はある。そしてたぶんこのせんせもその確信に近いところにいる。
一瞬の間にながれた俺の思考を知ってか知らずかせんせは少し不機嫌そうに頬を膨らませた。
あぁ、なんか動物っぽい。仔猫とも子犬とも違う、でもその類っぽい感じ。
「もう葵理事まで、桔梗先生や綾芽君みたいに人の事『バカ』って言わないでください。」
うわ…本気でバカ?
たった今他の男の話するなって言ったばかりだろうが。
「まーいいじゃねぇの、せんせ可愛いし。」
「からかわないで下さい。」
「はいはい失礼しました。」
俺はそういってエンジンをかけた。
今日はもうこれ以上タバコを吸う気にはなれない。
アクセルを踏みながらバックミラー越しにせんせの顔をのぞいた。
「…悪い。兄貴のことは俺がどうにかするから、必ず。」
どうにかしなきゃならねぇのは確かだ。
けどそこでどうしても判らなくなる。
兄貴のことにケリを付ける。
一番手っ取り早い方法を俺は知ってる。
けど、俺はそこで踏みとどまったまま動けない。
憎しみとも妬みとも違う、でも確かにドロドロと渦巻くものに
とらわれている。
それすら兄貴の思惑通りなのだろうか。
「…ちっ。」
俺は、まだ何本も残っているタバコをケースごと潰した。
ゆらりゆらり燃えてるよ
怒り?欲望?生命の炎?
ここに…ここに…あるものは望んでたものじゃない
褪めた目で今も見つめあい 同じハコで生きているだけ
当たり前の光景に何故涙が出るの
song by GARNETCROW『doubt』
----
葵視点。うーんキャラがつかめてない感ありあり。
そして本編の鬱っぽさを全然表現できてない。
昨日ともゑがヤンデレ過ぎてとか書いてた私が甘かった。
すげーわこのゲーム。鬱ゲー。
対象年齢15歳以上になってるけど精神年齢的には成人以上のほうが良いのではなかろうか。
つーかシナリオなげえ。終わりが見えなくて買って早々挫けそうです。
★私信★
>>ハル
私携帯版の方はノータッチだから、どんな感じなのか全然知らないのだけど、とりあえず攻略キャラが二人追加されとる。
ゲームの機能的にはビタミンXに似た物がある感じやね。
いつも通り桔梗ちゃんの郵便係になっていたせんせにそれだけ告げて、確かにせんせはそれに頷いていた。
俺は無論の事時間丁度にその場所に居る。仕事はきっと今頃桔梗が怖いほどの笑顔で引き受けてくれてるだろ。
俺がせんせと約束をすれば何故かそれは自然と桔梗に伝わる。
だから時間オーバーしそうになってもなんだかんだで桔梗がフォローをいれるから、大抵約束の時間にせんせは来る。
遅れたとしても精々5分程度。
だから車のディスプレイに表示された時刻が7:30を告げていたのを見て、俺は『何かあったんだ』と確信した。
何本目かわからないタバコを押しつぶしたところで助手席の窓が叩かれる。俺は腕を伸ばしてドアのロックを外した。
「遅れてすみません葵理事。書類の整理が長引いてしまって…」
開けたドアの向こうでせんせが申し訳なさそうに言う。
その表情には確かに焦燥と動揺が含まれていた。ほんと、わかりやすい。
「まー、いいからさっさと乗れよ。」
そういうと怖ず怖ずと華奢な体を折って助手席に座る。
うん、俺がもう何も言わずにシートベルト締めるようになった。いい子いい子。
「葵理事…?」
いつまでたっても車を発進させない俺を不思議そうにせんせが見つめた。ばれてないと思ってるのか、こいつは。
「セブンライト。」
仄かに匂っていたタバコの銘柄を言い当てるとせんせの体がピクリと揺れる。
「やっぱり兄貴に捕まったのか。」
俺はため息混じりに言った。
「どうして俺にすぐ電話でもメールでも寄越さなかった。」
「…だって紫陽さん、ともゑ君を連れ出して裏庭にいるだなんて電話で言ってきたから…結局嘘だったんですけど」
「はいストップ。」
俺は自分の人差し指をせんせの唇に押し当てた。
「せんせはバカだね。男と二人っきりのときに別の男の話なんてするもんじゃないぜ。」
兄貴に会っていた。そのことに対する俺の中でふっと沸いたものは、嫉妬とか言う単純で有り触れたものじゃない。
いっそそれで片付けられるのなら大助かりだ。
それはロゴスだと、自覚はある。そしてたぶんこのせんせもその確信に近いところにいる。
一瞬の間にながれた俺の思考を知ってか知らずかせんせは少し不機嫌そうに頬を膨らませた。
あぁ、なんか動物っぽい。仔猫とも子犬とも違う、でもその類っぽい感じ。
「もう葵理事まで、桔梗先生や綾芽君みたいに人の事『バカ』って言わないでください。」
うわ…本気でバカ?
たった今他の男の話するなって言ったばかりだろうが。
「まーいいじゃねぇの、せんせ可愛いし。」
「からかわないで下さい。」
「はいはい失礼しました。」
俺はそういってエンジンをかけた。
今日はもうこれ以上タバコを吸う気にはなれない。
アクセルを踏みながらバックミラー越しにせんせの顔をのぞいた。
「…悪い。兄貴のことは俺がどうにかするから、必ず。」
どうにかしなきゃならねぇのは確かだ。
けどそこでどうしても判らなくなる。
兄貴のことにケリを付ける。
一番手っ取り早い方法を俺は知ってる。
けど、俺はそこで踏みとどまったまま動けない。
憎しみとも妬みとも違う、でも確かにドロドロと渦巻くものに
とらわれている。
それすら兄貴の思惑通りなのだろうか。
「…ちっ。」
俺は、まだ何本も残っているタバコをケースごと潰した。
ゆらりゆらり燃えてるよ
怒り?欲望?生命の炎?
ここに…ここに…あるものは望んでたものじゃない
褪めた目で今も見つめあい 同じハコで生きているだけ
当たり前の光景に何故涙が出るの
song by GARNETCROW『doubt』
----
葵視点。うーんキャラがつかめてない感ありあり。
そして本編の鬱っぽさを全然表現できてない。
昨日ともゑがヤンデレ過ぎてとか書いてた私が甘かった。
すげーわこのゲーム。鬱ゲー。
対象年齢15歳以上になってるけど精神年齢的には成人以上のほうが良いのではなかろうか。
つーかシナリオなげえ。終わりが見えなくて買って早々挫けそうです。
★私信★
>>ハル
私携帯版の方はノータッチだから、どんな感じなのか全然知らないのだけど、とりあえず攻略キャラが二人追加されとる。
ゲームの機能的にはビタミンXに似た物がある感じやね。
ま た と ん だ
「―…」
「…い」
「おーい!」
「!?」
気がついたら二見が俺の目の前で手をひらひらとさせていた。
「だいじょーぶですかぁ?宇宙と交信中の方〜。」
ヘラっとした顔でふざけたことを言ってのけた二見をみて、意識しないうちに眉間に皺がよっていた。
すると、当たり前のように二見は俺のそこに人差し指を当てる。
「うるさい。槌谷と一緒にするな。」
わずらわしくなったその腕を払う。二見はわざと女々しく『あら冷たい』などど怖気が走るようにおちゃらける。
「ちなみに今もうすでに放課後。クラスの皆さんほとんどお帰りです。」
「え。」
言われて気付いた。俺の目の前に二見が居るくらいで後は誰も居ない。
一瞬あの時間の中に居るような錯覚を覚えたけど、周りは静まり返っているどころか、イラッとするほど騒がしかった。
「んで、あーたはどうするの?帰るんだったら俺もご一緒しますが?」
「…いや、俺叶先生に授業の事で聞きたいことあるから。お前先帰れ。」
「あいかわらず真面目さんですこと。窮屈じゃない?そういうの。」
「ほっとけ、俺の勝手だ。」
『そりゃそうだ』と半笑いで言った二見をその場に残し、俺はさっさと教室をでた。
無駄な時間をすごすのが一番嫌いだ。
職員室を通過して、科学準備室の前に立つ。
臨時とはいえ一応教師なのに職員室にいるよりもこの部屋に居ることの方が多い。
…というより、この部屋に居るところしか見たことがない。
実は着々とこの狭苦しい空間に、自分の城を作り上げているのではないか、と俺らしくもない下らない妄想が襲う。
「失礼します。」
2回ノックをしてガラリとドアを開ける。
コポコポとビーカーの中で怪しげな音を立て怪しげな色を発している液体を眺める、濃い青色の髪がうつった。
「叶先生。今日の授業の内容でお聞きしたいことが…。」
「・・・・。」
「?」
聞こえているはずなのに振り返らない。転寝しているにしては背筋が恐ろしく真っ直ぐだった。
もう一度声をかけようと息を吸い込んだ。
「やぁ。」
キャスターのついた椅子がぐるりと半回転してこちらを向いた。
手を上げてなぜか至極幸せそうな笑みを俺に向けていた。
「なにかな?」
「いや、だから先生に今日の授業のことで質問が…」
「・・・・。」
「…?」
また先生は何か思案するような顔つきで黙ってしまった。
テンポの悪い会話も嫌いだ。でもまさか先生の前で不機嫌な顔をあらわにするわけにはいかない。
「そうか、先生だ。先生だな。うん。」
「…は。」
「それで、どうしたんだい?」
「!?だ、からっ…!」
だめだ。意味不明すぎる。
次元が違う。槌谷並か下手したらそれ以上かもしれない。
「今日の授」
「へーい!俺を呼んだかーイカロスの翼は太陽に焼かれてウェルダン!」
頭痛と眩暈と吐き気が一編に押し寄せてきた気がした。
「呼んでない。帰れ。」
「でも焼けた翼で墜落したら森は大火事で山火事の全国バケツリレー選手権大会開始〜。」
「人の話を」
「安心したまえ。イカロスは森じゃなくて海に墜落するのだ。」
「おお、自動鎮火完了〜お疲れ様でした〜」
「いい加減にしろ!お前はさっさと水泳部のプールにでも墜落して来い!!」
「あいあいさ〜」
しまった、と思ったときにはもう遅い。
槌谷の鬱陶しい背中を蹴り上げるなど、人前では、特に教師の前ではしたことなどないのに。
蹴られた槌谷は何事もなかったかのように去って行った。
相変わらず台風のような…いや、あいつの場合台風すら退けそうな、前代未聞の天変地異みたいな奴だ。
なぜ俺はあんな奴といるのだろうか。
「ところで。」
俺の後ろから聞こえた、妙に落ち着いた叶先生の声にハッとなって振り返った。
「なにか用かな?」
「・・・・っ!」
無理だ。
このまま鬱積した物を爆発させても許されるんじゃないかと思う。
「もう、結構です!失礼しました!」
持っていた教科書とノートを乱暴にカバンの中に放り込んで、槌谷が半壊にして行ったドアに向かって足を進めた。
「まぁ待ちなさい。コーヒーでも飲んでいきたまえ。」
そこでいきなり叶先生が俺の手を掴んだ。
制服でも腕でもなくて、手を。
「いいえ、もう帰…」
断ろうと振り返ったら、目の前にはすでに、黒い液体が注がれたマグカップ代わりにしているビーカーが二つ用意されていた。
「まぁまぁ。座って座って。」
盛大にため息をつきたいのを堪えて、俺は手近にあった椅子を引き寄せて座った。
冗談じゃない。ただでさえあの鐘のせいで調子が狂いっぱなしなのに。
どうしてまともなはずの現実でもこんな風にならなきゃなんねぇのか。
熱いコーヒーを無理やり嚥下して視線を上げると、先生の背後の窓に夕日がうつった。
―あぁ、もう。今日もおかしいことばかりだ。
----
オーヴァードクロックより。
書きなぐり。
「―…」
「…い」
「おーい!」
「!?」
気がついたら二見が俺の目の前で手をひらひらとさせていた。
「だいじょーぶですかぁ?宇宙と交信中の方〜。」
ヘラっとした顔でふざけたことを言ってのけた二見をみて、意識しないうちに眉間に皺がよっていた。
すると、当たり前のように二見は俺のそこに人差し指を当てる。
「うるさい。槌谷と一緒にするな。」
わずらわしくなったその腕を払う。二見はわざと女々しく『あら冷たい』などど怖気が走るようにおちゃらける。
「ちなみに今もうすでに放課後。クラスの皆さんほとんどお帰りです。」
「え。」
言われて気付いた。俺の目の前に二見が居るくらいで後は誰も居ない。
一瞬あの時間の中に居るような錯覚を覚えたけど、周りは静まり返っているどころか、イラッとするほど騒がしかった。
「んで、あーたはどうするの?帰るんだったら俺もご一緒しますが?」
「…いや、俺叶先生に授業の事で聞きたいことあるから。お前先帰れ。」
「あいかわらず真面目さんですこと。窮屈じゃない?そういうの。」
「ほっとけ、俺の勝手だ。」
『そりゃそうだ』と半笑いで言った二見をその場に残し、俺はさっさと教室をでた。
無駄な時間をすごすのが一番嫌いだ。
職員室を通過して、科学準備室の前に立つ。
臨時とはいえ一応教師なのに職員室にいるよりもこの部屋に居ることの方が多い。
…というより、この部屋に居るところしか見たことがない。
実は着々とこの狭苦しい空間に、自分の城を作り上げているのではないか、と俺らしくもない下らない妄想が襲う。
「失礼します。」
2回ノックをしてガラリとドアを開ける。
コポコポとビーカーの中で怪しげな音を立て怪しげな色を発している液体を眺める、濃い青色の髪がうつった。
「叶先生。今日の授業の内容でお聞きしたいことが…。」
「・・・・。」
「?」
聞こえているはずなのに振り返らない。転寝しているにしては背筋が恐ろしく真っ直ぐだった。
もう一度声をかけようと息を吸い込んだ。
「やぁ。」
キャスターのついた椅子がぐるりと半回転してこちらを向いた。
手を上げてなぜか至極幸せそうな笑みを俺に向けていた。
「なにかな?」
「いや、だから先生に今日の授業のことで質問が…」
「・・・・。」
「…?」
また先生は何か思案するような顔つきで黙ってしまった。
テンポの悪い会話も嫌いだ。でもまさか先生の前で不機嫌な顔をあらわにするわけにはいかない。
「そうか、先生だ。先生だな。うん。」
「…は。」
「それで、どうしたんだい?」
「!?だ、からっ…!」
だめだ。意味不明すぎる。
次元が違う。槌谷並か下手したらそれ以上かもしれない。
「今日の授」
「へーい!俺を呼んだかーイカロスの翼は太陽に焼かれてウェルダン!」
頭痛と眩暈と吐き気が一編に押し寄せてきた気がした。
「呼んでない。帰れ。」
「でも焼けた翼で墜落したら森は大火事で山火事の全国バケツリレー選手権大会開始〜。」
「人の話を」
「安心したまえ。イカロスは森じゃなくて海に墜落するのだ。」
「おお、自動鎮火完了〜お疲れ様でした〜」
「いい加減にしろ!お前はさっさと水泳部のプールにでも墜落して来い!!」
「あいあいさ〜」
しまった、と思ったときにはもう遅い。
槌谷の鬱陶しい背中を蹴り上げるなど、人前では、特に教師の前ではしたことなどないのに。
蹴られた槌谷は何事もなかったかのように去って行った。
相変わらず台風のような…いや、あいつの場合台風すら退けそうな、前代未聞の天変地異みたいな奴だ。
なぜ俺はあんな奴といるのだろうか。
「ところで。」
俺の後ろから聞こえた、妙に落ち着いた叶先生の声にハッとなって振り返った。
「なにか用かな?」
「・・・・っ!」
無理だ。
このまま鬱積した物を爆発させても許されるんじゃないかと思う。
「もう、結構です!失礼しました!」
持っていた教科書とノートを乱暴にカバンの中に放り込んで、槌谷が半壊にして行ったドアに向かって足を進めた。
「まぁ待ちなさい。コーヒーでも飲んでいきたまえ。」
そこでいきなり叶先生が俺の手を掴んだ。
制服でも腕でもなくて、手を。
「いいえ、もう帰…」
断ろうと振り返ったら、目の前にはすでに、黒い液体が注がれたマグカップ代わりにしているビーカーが二つ用意されていた。
「まぁまぁ。座って座って。」
盛大にため息をつきたいのを堪えて、俺は手近にあった椅子を引き寄せて座った。
冗談じゃない。ただでさえあの鐘のせいで調子が狂いっぱなしなのに。
どうしてまともなはずの現実でもこんな風にならなきゃなんねぇのか。
熱いコーヒーを無理やり嚥下して視線を上げると、先生の背後の窓に夕日がうつった。
―あぁ、もう。今日もおかしいことばかりだ。
----
オーヴァードクロックより。
書きなぐり。
世界は広く知らない事溢れてて自分さえ見失いそう
2007年10月8日 SSだけど君と生きてゆきたいから 戸惑いながらでもいい
つないだ手を離さないでね
『休憩するぞ、10分だけ、な。』
ネズミがそう言ったのが今から10分前。
「・・・・。」
僕は常時薄暗い周囲に目が慣れてきたことに、妙な感じを覚えながら、隣でうずくまったままのネズミを見た。
「ネズミ。もう10分たったよ。」
肩を揺らしてみる。
―応えない。
不明瞭な視界の中ではネズミの肩がちゃんと呼吸に合わせて上下しているのも見えない。
まさか、そんな、
文にならない言葉が単語だけで脳内をよぎる。
僕はネズミの正面に回って、今度は両肩をつかんだ。
「…ネズミってば。」
―応えない
僕が肩を前後に揺らす振動に合わせて肢体がガクガクと動くだけだった。
嘘だ、嫌だ、怖い、
負の感情ばかりが周囲を包んだ。
「ネズミ!!」
空腹で、疲れ切っていて、喉が焼け付くようにカラカラだった。
なのに僕の口から出た声は自分で思っていた以上に反響した。
「…し、おん」
項垂れていた首がゆっくりと僕に向けられた。
僕は肺の奥にたまっていた空気をめいっぱい吐き出した。
救済されたような気分に陥ってるとネズミの手が僕の頬に触れる。
「なんだよ、青い顔して。」
「だって、君が…僕が起こしても、起きないから…」
ネズミが薄暗い中、僕でもはっきりわかるように笑った。
「永眠してるかと思ったか?残念だったな。」
「ネズミ…!」
冗談でも聞きたくない。
肩を掴んだままの僕の指がネズミの服に皺を作る。
「ふん、今度は真っ赤だ。あんたの顔見てると本当面白い。
…心配しなくても、ちょっとばかり熟睡してただけだ、俺は。」
「じゅく、すい…?」
「『こんなときに何考えてるんだ』って顔だな。俺にもよくわからないけど、この10分間、意識が完全に飛んでた。」
僕の頬に触れていた手をぶらりと落とした。
「ま、一人じゃ何も出来ない赤子同然のアンタをほっぽり出して死ぬようなマネはしないさ。」
「…うん。」
ネズミの眉がゆがんだ。
「なんだ?やけに素直だな。」
だって、そうだ。
本当のことだ。
怖い。
「君に死なれたら困る。」
「・・・・・。」
ポロリと零れた言葉に、ネズミの目が一瞬大きく開いた気がした。
そのまま何かを誤魔化すような小さなため息を着いたかと思えばスッと立ち上がる。
その時僕の手も掴んで立たされた。
コツン、と小さな音がした。
僕は何が起きたのかその場で瞬時に理解することは出来なかった。
気がついたときにはネズミの顔が僕の鼻先に触れるくらいに近づいていた。
ネズミは僕の頬を両手で包み込むようにしながら、目を瞑って額と額を合わせていた。母親が子供の熱を測るみたいに。
「ネズミ…?」
「確かに、アンタ一人じゃ何にも出来ない。死ぬだけだ。
でも、俺一人でもこの先死ぬだけだ。俺はアンタみたいな要領のでかい頭は持ち合わせてないからな。そこはアンタが自身もって良いことだろ。」
「ネ」
「ほら、休憩終わり。行くぞ、紫苑。」
そういって握られた手はいつもより暖かくて強かった気がした。
----------
NO.6の6巻の終盤辺りを意識。
二人の互いの依存度が強くなってるのも好きだけど、外で頑張ってるイヌカシが前より好きになった私。
song by GARNET CROW -夏の幻-
つないだ手を離さないでね
『休憩するぞ、10分だけ、な。』
ネズミがそう言ったのが今から10分前。
「・・・・。」
僕は常時薄暗い周囲に目が慣れてきたことに、妙な感じを覚えながら、隣でうずくまったままのネズミを見た。
「ネズミ。もう10分たったよ。」
肩を揺らしてみる。
―応えない。
不明瞭な視界の中ではネズミの肩がちゃんと呼吸に合わせて上下しているのも見えない。
まさか、そんな、
文にならない言葉が単語だけで脳内をよぎる。
僕はネズミの正面に回って、今度は両肩をつかんだ。
「…ネズミってば。」
―応えない
僕が肩を前後に揺らす振動に合わせて肢体がガクガクと動くだけだった。
嘘だ、嫌だ、怖い、
負の感情ばかりが周囲を包んだ。
「ネズミ!!」
空腹で、疲れ切っていて、喉が焼け付くようにカラカラだった。
なのに僕の口から出た声は自分で思っていた以上に反響した。
「…し、おん」
項垂れていた首がゆっくりと僕に向けられた。
僕は肺の奥にたまっていた空気をめいっぱい吐き出した。
救済されたような気分に陥ってるとネズミの手が僕の頬に触れる。
「なんだよ、青い顔して。」
「だって、君が…僕が起こしても、起きないから…」
ネズミが薄暗い中、僕でもはっきりわかるように笑った。
「永眠してるかと思ったか?残念だったな。」
「ネズミ…!」
冗談でも聞きたくない。
肩を掴んだままの僕の指がネズミの服に皺を作る。
「ふん、今度は真っ赤だ。あんたの顔見てると本当面白い。
…心配しなくても、ちょっとばかり熟睡してただけだ、俺は。」
「じゅく、すい…?」
「『こんなときに何考えてるんだ』って顔だな。俺にもよくわからないけど、この10分間、意識が完全に飛んでた。」
僕の頬に触れていた手をぶらりと落とした。
「ま、一人じゃ何も出来ない赤子同然のアンタをほっぽり出して死ぬようなマネはしないさ。」
「…うん。」
ネズミの眉がゆがんだ。
「なんだ?やけに素直だな。」
だって、そうだ。
本当のことだ。
怖い。
「君に死なれたら困る。」
「・・・・・。」
ポロリと零れた言葉に、ネズミの目が一瞬大きく開いた気がした。
そのまま何かを誤魔化すような小さなため息を着いたかと思えばスッと立ち上がる。
その時僕の手も掴んで立たされた。
コツン、と小さな音がした。
僕は何が起きたのかその場で瞬時に理解することは出来なかった。
気がついたときにはネズミの顔が僕の鼻先に触れるくらいに近づいていた。
ネズミは僕の頬を両手で包み込むようにしながら、目を瞑って額と額を合わせていた。母親が子供の熱を測るみたいに。
「ネズミ…?」
「確かに、アンタ一人じゃ何にも出来ない。死ぬだけだ。
でも、俺一人でもこの先死ぬだけだ。俺はアンタみたいな要領のでかい頭は持ち合わせてないからな。そこはアンタが自身もって良いことだろ。」
「ネ」
「ほら、休憩終わり。行くぞ、紫苑。」
そういって握られた手はいつもより暖かくて強かった気がした。
----------
NO.6の6巻の終盤辺りを意識。
二人の互いの依存度が強くなってるのも好きだけど、外で頑張ってるイヌカシが前より好きになった私。
song by GARNET CROW -夏の幻-
「・・・・で?」
「すみません鳳様。」
「言っておくが、三十路近くの図体のでかいどこか間違ったホストのような男が正座して上目遣いしても不快、且つ不愉快で見苦しいだけだからね葛城先生。」
玄関先で家の主が仁王立ち。
対して居候は正座。
そして正座している男の後ろではつい数分前まで『花瓶』と呼ばれていた筈の陶器のかけらが撒き散らされ、その上を、花弁が見る影もなくもがれたバラが鮮やかに彩っていた。
おまけに床にはぶちまかれた水がカーペットの模様を淀ませている。
帰ってきて玄関を開けたらこれはなんと見事な出迎えだろう。
取りあえず鳳は葛城の弁解にならない事情の説明を待った。
「いやさ、ほら明日ってマイスイートハニーがB6受け持って3ヶ月経つだろう?」
「あぁそうだね、まだ若くて新任なのによく頑張っているよ。君と違って。」
「ノーウ!そりゃ酷いんじゃないの鳳センセ。」
「・・・・・。」
「はい、すみませんーごめんなさいー睨まないでー。」
口角が引きつり一瞬で眉間に深い皺がよる。
そうでありながら極上の笑みを無言で向ける鳳のそれは、葛城を黙らせるには充分すぎた。
「だから、それがどうして今の惨状につながるんだい。」
「はい、それを語り明かすにはですね長い時間を要す・・」
「5分以内で話したまえ。」
「いや、だからね。明日その3ヶ月の記念とこれからの働きを応援しようと、俺葛城銀児様は考えたわけですよ。」
頭痛が始りそうな頭をくしゃりと握りながら鳳は何か嫌な予感を覚えながら先を待った。
「で、俺に出来るベストな方法といえば、そりゃもう情熱的でワイルドな抱擁!そして問題はそれをいかにビューティフルかつスマートにこなすか!」
「まさかとは思うけども、その下らなくて暑苦しい、クーリングオフしたくなるような贈り物の練習台に、私のお気に入りの花瓶を使おうとしてこんな状態になったんじゃないんだろうね。」
「うひょう。スンバラシ〜イ推理。ドンピシャ!鳳センセってば探偵の素質があったりなかったりす」
―ドゴン
「ぐふ」
葛城の体が言葉を最後まで紡げずに沈んだ。
その体を玄関マットのごとく鳳は踏み越える。
葛城の腕が空をつかむようにプルプルと震えた。
「お、鳳様?今の一撃いつもよりかーなりヘビィなんですけど?」
「あぁ失礼。手元に原簿がなかったものでこれで代用させてもらったよ。」
と鳳は振り返りもせずに持っていた物を葛城に見えるようちらつかせる。
衝撃でふらつく頭を抑えながら体を起こす葛城の視線にそれが入った瞬間葛城は一瞬卒倒しそうになる。
「ちょ、それ広辞苑・・。え、なに鳳先生俺殺す気?
そんなものの角で頭殴られたら昇天しちゃうよ。」
「大丈夫、今現在君は生きてるじゃないか。それに聖帝学園高等部が誇る名国語教師が広辞苑で死ねるのなら本望だと思うけどね。」
「嫌だ!俺はそんな死に方したくない!子猫ちゃんの・・マイスイートハニーとハッピーウェディングを迎えずして天に召されてたまるかぁああ!」
「もう一発食らうかい?」
「スミマセン御免なさいお許しください鳳様。」
額を打ち付けるように土下座する葛城に対して鳳はもうため息をつく事しか出来なかった。
「早く片付けなさい。夕飯の時間が遅くなる。」
そう言って鳳はキッチンへと姿を消した。
「…なんだかんだでいつも先に食べずに待っててくれるのね、鳳センセ。」
雑巾で荒々しく床を拭く葛城の顔はどこか満足げに微笑んでいた。
---
ビタミンXで葛鳳(リバ可)
杉田さんが暴走しすぎ。
ビタミンXは先生陣が皆好き。すごいや。全部うまいこと私のツボついてる。
九影先生も大好き。
ちなみにタイトルはガネクロの曲から。
「すみません鳳様。」
「言っておくが、三十路近くの図体のでかいどこか間違ったホストのような男が正座して上目遣いしても不快、且つ不愉快で見苦しいだけだからね葛城先生。」
玄関先で家の主が仁王立ち。
対して居候は正座。
そして正座している男の後ろではつい数分前まで『花瓶』と呼ばれていた筈の陶器のかけらが撒き散らされ、その上を、花弁が見る影もなくもがれたバラが鮮やかに彩っていた。
おまけに床にはぶちまかれた水がカーペットの模様を淀ませている。
帰ってきて玄関を開けたらこれはなんと見事な出迎えだろう。
取りあえず鳳は葛城の弁解にならない事情の説明を待った。
「いやさ、ほら明日ってマイスイートハニーがB6受け持って3ヶ月経つだろう?」
「あぁそうだね、まだ若くて新任なのによく頑張っているよ。君と違って。」
「ノーウ!そりゃ酷いんじゃないの鳳センセ。」
「・・・・・。」
「はい、すみませんーごめんなさいー睨まないでー。」
口角が引きつり一瞬で眉間に深い皺がよる。
そうでありながら極上の笑みを無言で向ける鳳のそれは、葛城を黙らせるには充分すぎた。
「だから、それがどうして今の惨状につながるんだい。」
「はい、それを語り明かすにはですね長い時間を要す・・」
「5分以内で話したまえ。」
「いや、だからね。明日その3ヶ月の記念とこれからの働きを応援しようと、俺葛城銀児様は考えたわけですよ。」
頭痛が始りそうな頭をくしゃりと握りながら鳳は何か嫌な予感を覚えながら先を待った。
「で、俺に出来るベストな方法といえば、そりゃもう情熱的でワイルドな抱擁!そして問題はそれをいかにビューティフルかつスマートにこなすか!」
「まさかとは思うけども、その下らなくて暑苦しい、クーリングオフしたくなるような贈り物の練習台に、私のお気に入りの花瓶を使おうとしてこんな状態になったんじゃないんだろうね。」
「うひょう。スンバラシ〜イ推理。ドンピシャ!鳳センセってば探偵の素質があったりなかったりす」
―ドゴン
「ぐふ」
葛城の体が言葉を最後まで紡げずに沈んだ。
その体を玄関マットのごとく鳳は踏み越える。
葛城の腕が空をつかむようにプルプルと震えた。
「お、鳳様?今の一撃いつもよりかーなりヘビィなんですけど?」
「あぁ失礼。手元に原簿がなかったものでこれで代用させてもらったよ。」
と鳳は振り返りもせずに持っていた物を葛城に見えるようちらつかせる。
衝撃でふらつく頭を抑えながら体を起こす葛城の視線にそれが入った瞬間葛城は一瞬卒倒しそうになる。
「ちょ、それ広辞苑・・。え、なに鳳先生俺殺す気?
そんなものの角で頭殴られたら昇天しちゃうよ。」
「大丈夫、今現在君は生きてるじゃないか。それに聖帝学園高等部が誇る名国語教師が広辞苑で死ねるのなら本望だと思うけどね。」
「嫌だ!俺はそんな死に方したくない!子猫ちゃんの・・マイスイートハニーとハッピーウェディングを迎えずして天に召されてたまるかぁああ!」
「もう一発食らうかい?」
「スミマセン御免なさいお許しください鳳様。」
額を打ち付けるように土下座する葛城に対して鳳はもうため息をつく事しか出来なかった。
「早く片付けなさい。夕飯の時間が遅くなる。」
そう言って鳳はキッチンへと姿を消した。
「…なんだかんだでいつも先に食べずに待っててくれるのね、鳳センセ。」
雑巾で荒々しく床を拭く葛城の顔はどこか満足げに微笑んでいた。
---
ビタミンXで葛鳳(リバ可)
杉田さんが暴走しすぎ。
ビタミンXは先生陣が皆好き。すごいや。全部うまいこと私のツボついてる。
九影先生も大好き。
ちなみにタイトルはガネクロの曲から。
未来を覗き込みたがる、目の前の世界をおいてとりあえず予測してみる
2007年9月27日 SS コメント (1)「君が仕事している所を見てみたい。」
空耳かと思った。
「は?」
さっきまで膝の上で鳴いているハムレット
―アイツが勝手につけた名前で呼ぶのも癪だけど。
ともかく、そのハムレットにシェイクスピアの確か…『夏の夜の夢』を朗読していたんだ。
俺の記憶が間違っていなければこの話に『君が仕事している所を見てみたい』だなんて一節はない。
取りあえず数え切れないほど読みつくした本を閉じて振り返ってみた。
うわ、まっすぐこっちを見ている。
「もう一度言ってみて」
「君が、仕事している所を、見てみたい。って言ったんだ。」
むかつく。イラつく。わざわざ文節ごとに強調して言い直したな。
「もう一度言ってみてって言ったのはネズミの方だろ。ボクはその通りにしただけだ。」
…いつの間に読心術まで身に着けたんだろうねこいつは。
「一応聞くけど何で?」
「理由が必要なの?」
「問いに問いで答えるな腹立つ。」
大体、いっつも何かをするにあたってどうしようもない、下らない、論理的且つ現実的な『理由』を求めるのはお前だろう。
俺はそう口には出さずに膝の上のハムレットに視線を落とした。
途中で朗読を中断されたからか機嫌が悪そうに髭を揺らす。
「早く続き読んでやれ。ハムレットがお怒りだ。」
「話変えないでよ。」
「うるさい。大体あんたイヌカシの仕事があるだろ。」
「毎日ってわけじゃない。」
「お前、なんで自分がこの場所に逃げ込んで、この場所で暮らしているか、生きているか忘れてないか。」
「心配してくれてるの?」
本を、なげつけてやろうかと、本気で思った。
片手でもっていた本が、俺の常人より強い握力で嫌な音を立てる。
「何で見たい?見てどうする?アンタがいっつも聞くことだろ?『どうして?』『なんで?』人にはしつこく求めるくせに自分じゃ答えないのか。卑怯者。」
「今日は君の方が質問多いねネズミ。普段ボクが理由を求めることを馬鹿にするくせに。」
沸々と湧き出すような怒りを感じたのは何年ぶりだろう。
「止めた。」
「え?」
「アンタと言葉遊びして時間を費やすのを止めたって言ったんだよ。」
「別にボクはただ・・」
「いい加減にしろ紫苑、襲うぞ。」
「あの時みたいにスプーンで?」
駄目だ、今日のコイツはなんでこう、人の感情も何もかも抉りだすような切り替えしばかりしてくるんだ。
…違う、俺が…俺も、変だ。
久しぶりに言葉での敗北を味わった気がした。
----
NO.6の1〜2巻を読んで。なんか手探り状態だな。
title song by GARNET CROW -Ring Ring a ding-
プルト:バグウェルに何とか勝利。そして長男ヒロヒト入学。
女の子が欲しいけどさすがに旦那が限界のようで兆しなし。
そろそろ次の旦那の目星つけるべきか
ところで長男ヒロヒトは母親のこと「おかあさん」と呼ぶけど次男ヒトシは「ママ」と呼ぶ。何の差。
★私信★
>>ハル
今3巻の半ばぐらいまで進みましたー。
ベッドの中でにやけるの堪えながら本読むの久しぶりだよ。(笑)
空耳かと思った。
「は?」
さっきまで膝の上で鳴いているハムレット
―アイツが勝手につけた名前で呼ぶのも癪だけど。
ともかく、そのハムレットにシェイクスピアの確か…『夏の夜の夢』を朗読していたんだ。
俺の記憶が間違っていなければこの話に『君が仕事している所を見てみたい』だなんて一節はない。
取りあえず数え切れないほど読みつくした本を閉じて振り返ってみた。
うわ、まっすぐこっちを見ている。
「もう一度言ってみて」
「君が、仕事している所を、見てみたい。って言ったんだ。」
むかつく。イラつく。わざわざ文節ごとに強調して言い直したな。
「もう一度言ってみてって言ったのはネズミの方だろ。ボクはその通りにしただけだ。」
…いつの間に読心術まで身に着けたんだろうねこいつは。
「一応聞くけど何で?」
「理由が必要なの?」
「問いに問いで答えるな腹立つ。」
大体、いっつも何かをするにあたってどうしようもない、下らない、論理的且つ現実的な『理由』を求めるのはお前だろう。
俺はそう口には出さずに膝の上のハムレットに視線を落とした。
途中で朗読を中断されたからか機嫌が悪そうに髭を揺らす。
「早く続き読んでやれ。ハムレットがお怒りだ。」
「話変えないでよ。」
「うるさい。大体あんたイヌカシの仕事があるだろ。」
「毎日ってわけじゃない。」
「お前、なんで自分がこの場所に逃げ込んで、この場所で暮らしているか、生きているか忘れてないか。」
「心配してくれてるの?」
本を、なげつけてやろうかと、本気で思った。
片手でもっていた本が、俺の常人より強い握力で嫌な音を立てる。
「何で見たい?見てどうする?アンタがいっつも聞くことだろ?『どうして?』『なんで?』人にはしつこく求めるくせに自分じゃ答えないのか。卑怯者。」
「今日は君の方が質問多いねネズミ。普段ボクが理由を求めることを馬鹿にするくせに。」
沸々と湧き出すような怒りを感じたのは何年ぶりだろう。
「止めた。」
「え?」
「アンタと言葉遊びして時間を費やすのを止めたって言ったんだよ。」
「別にボクはただ・・」
「いい加減にしろ紫苑、襲うぞ。」
「あの時みたいにスプーンで?」
駄目だ、今日のコイツはなんでこう、人の感情も何もかも抉りだすような切り替えしばかりしてくるんだ。
…違う、俺が…俺も、変だ。
久しぶりに言葉での敗北を味わった気がした。
----
NO.6の1〜2巻を読んで。なんか手探り状態だな。
title song by GARNET CROW -Ring Ring a ding-
プルト:バグウェルに何とか勝利。そして長男ヒロヒト入学。
女の子が欲しいけどさすがに旦那が限界のようで兆しなし。
ところで長男ヒロヒトは母親のこと「おかあさん」と呼ぶけど次男ヒトシは「ママ」と呼ぶ。何の差。
★私信★
>>ハル
今3巻の半ばぐらいまで進みましたー。
ベッドの中でにやけるの堪えながら本読むの久しぶりだよ。(笑)
今朝、いつも通る交差点の所で後ろ姿を見かけた。
距離にして多分50メートル位。
大声出せば聞こえるだろうが、他に同じ学校の奴が通学している中でそうするのもなんとなく気が引けた。
追いつければ、いい。
そう思って脚が早くなった。
あと10メートル。
ここからなら声を掛けても不自然じゃない。
だなんて妙に計算くさいことばかり考えてたらあいつの直ぐ横に、やたらと胴の長い車が止まった。
車のウィンドウが開いて出てきたのは『あの』柚木先輩。
そのままあいつと2,3言言葉を交わしたかと思えばあいつはそのまま車の中に消えた。
サッカーで鍛えた俺の脚でももう追いつけない。
授業、昼休み、授業、セレクションが始ってからはやたらに時間が過ぎるのが早い。
あっという間に放課後になってクラスの連中もゾロゾロと帰っていく。
俺もピアノの練習もそこそこに家路に付こうと校門へ向かった。
そこでまたあいつに気づく。
距離はたぶん30メートル位。
「お」
口が開いたままとまった。
俺より先にあいつに声を掛けたやつがいた。
よりにもよって
「月森かよ…」
朝同様あいつは2,3言言葉を交わしてそのまま月森と帰っていった。
「青春だな!土浦遼太郎!」
「黙れリリ、キンピラと一緒に炒めるぞ。」
俺の横で憎たらしいほど楽しそうに言ってのけた金色のアルジェントに向かって鞄を振った。
ますます腹立たしいことにぶつかる寸前に笑いながら姿を消したから鞄は空振る。
おまけに、周りの奴からすれば、俺は突然何もない空間に鞄を振り回した妙な奴にしか写らなかった。
「やっぱりチャリ通の申請するか…」
あいつは今頃交差点に差し掛かった頃だろうか。
溜息が、ひとつおちた。
------
ある意味実話。
月森君と柚木と土浦君の親密度が同じ位で日によって朝一緒に行ったり放課後誘ってくる人が変わる。
一度継続下校が柚木で継続登校が土浦君になった事もある(笑)
ようするに私が土浦君好きだって話し。
距離にして多分50メートル位。
大声出せば聞こえるだろうが、他に同じ学校の奴が通学している中でそうするのもなんとなく気が引けた。
追いつければ、いい。
そう思って脚が早くなった。
あと10メートル。
ここからなら声を掛けても不自然じゃない。
だなんて妙に計算くさいことばかり考えてたらあいつの直ぐ横に、やたらと胴の長い車が止まった。
車のウィンドウが開いて出てきたのは『あの』柚木先輩。
そのままあいつと2,3言言葉を交わしたかと思えばあいつはそのまま車の中に消えた。
サッカーで鍛えた俺の脚でももう追いつけない。
授業、昼休み、授業、セレクションが始ってからはやたらに時間が過ぎるのが早い。
あっという間に放課後になってクラスの連中もゾロゾロと帰っていく。
俺もピアノの練習もそこそこに家路に付こうと校門へ向かった。
そこでまたあいつに気づく。
距離はたぶん30メートル位。
「お」
口が開いたままとまった。
俺より先にあいつに声を掛けたやつがいた。
よりにもよって
「月森かよ…」
朝同様あいつは2,3言言葉を交わしてそのまま月森と帰っていった。
「青春だな!土浦遼太郎!」
「黙れリリ、キンピラと一緒に炒めるぞ。」
俺の横で憎たらしいほど楽しそうに言ってのけた金色のアルジェントに向かって鞄を振った。
ますます腹立たしいことにぶつかる寸前に笑いながら姿を消したから鞄は空振る。
おまけに、周りの奴からすれば、俺は突然何もない空間に鞄を振り回した妙な奴にしか写らなかった。
「やっぱりチャリ通の申請するか…」
あいつは今頃交差点に差し掛かった頃だろうか。
溜息が、ひとつおちた。
------
ある意味実話。
月森君と柚木と土浦君の親密度が同じ位で日によって朝一緒に行ったり放課後誘ってくる人が変わる。
一度継続下校が柚木で継続登校が土浦君になった事もある(笑)
ようするに私が土浦君好きだって話し。
汚れた?
違う
汚れていた。
黒く?
違う
赤かったのが黒ずんだ。
お前にはいるのかアッシュ(ルーク)
この手をとってくれる人が。
違う。
いないのはオマエダ(俺だ)
どーもテイルズシリーズはCPより夢小説書きたくなる。
なんていうかCPはあからさま過ぎだから萌えはゲームだけで満足できちゃうんだよねー。
とかいいながらルクア(逆可)
違う
汚れていた。
黒く?
違う
赤かったのが黒ずんだ。
お前にはいるのかアッシュ(ルーク)
この手をとってくれる人が。
違う。
いないのはオマエダ(俺だ)
どーもテイルズシリーズはCPより夢小説書きたくなる。
なんていうかCPはあからさま過ぎだから萌えはゲームだけで満足できちゃうんだよねー。
とかいいながらルクア(逆可)
来た客が仏頂面で帰る。
それはもうこの城じゃ当たり前のような光景だ。
―今日は島津の所の使い…か。
恐らく徳川に何かしら仕掛けようと持ちかけてあの人に門前払いされたんだろうな。
もうちょっと歯に絹を着せた物言いをしないとつかめるものも掴めませんよ殿。
家康の真似事をしろっていってんじゃない(むしろそんな事言ったら俺でも斬られそうだ)んだけど時々頭が痛くなることもある。
「殿ー、入りますよ。」
返事が帰る前に殿の部屋を開ける。
殿が執務に集中してるときは来客が誰であろうと入室者の確認をしようともしない。
そこでまず客さんの機嫌が悪くなる。
そりゃそうだろう。
「どうした左近。」
今も俺のほうをチラリと見もしないで問いかけてくる。
「いえね、今日の分の仕事片付いてちょっと暇を持て余したもんですから。」
「なら休めばいいだろう。」
「いやー生憎と真昼間から寝こける芸当は持ち合わせてないんですが。」
そこまで言うと殿の筆の動きが止まる。
そのまま一度立ち上がったかと思えば無駄のない動きで箪笥から何か取り出して俺に渡した。
「ならば其れを使って写経でもしていればいい。
お前の字は時々崩れる癖があるから丁度いいだろう。」
駄目だしされに来たわけじゃないんだけどな俺は。
いっその事殿に女遊びの一つでも教えたほうが有意義に過ごせるんじゃないか。
よもや『赤子はコウノトリが運んでくる』と言い出すのではあるまい。
「殿の仕事手伝ったっていいんですがね。」
「必要ない。」
「たまには碁でも打ちません?」
「打たぬ。」
「・・・・・。」
ちょっとくらいこっち見て答えてくれないもんですかね。
まぁでも執務に集中してるアンタの顔見るのも好きだからいいけど。
「左近。」
「はいはい?」
「…疲れていないか?」
「…はい?」
前触れもなくなんでしょうね行き成り。
俺からすりゃいつ寝てるかわかんない殿の方が疲れている気がするんだけど。
「別に今すぐ休みたいほど疲れちゃいませんが。」
「俺は…」
うーん、微妙に会話が噛みあってない。
…が、何か話し出そうとする殿の表情が少し変わったのは逃さない。
我ながら目ざとい。
「…お前に頼りすぎている気がしてならない。
俺は、俺の言葉は他人を不快にする。それが本意でなくともだ。」
ええそりゃもう。
「左近に対してもそうなっているのではないか。
そう思うと嫌になる。」
「殿…。やっぱちょっとお疲れ気味なんじゃないですか?俺が代わりますから殿は…」
「左近。」
今日はよく人の話遮るなぁ。
「『殿』はやめろ。」
…やっぱ相当疲れてんじゃないのかこのお方は。
「殿、正直言って意味わからないんですけど。」
「今は、…今だけは家臣の島左近ではなく、同志の島左近と話がしたい。」
あ、やっとこっちみた。
「俺にはお前は必要なんだ左近。お前を欠いては勝てる戦も勝てなくなる。
だからお前に過労で臥したりして欲しくない。だが俺はどうしてもお前に頼ってしまう。」
…なんだかんだいって結構思われてる。
それは長い付き合いだから良くわかってる。
けれど直接言葉にして聞くことは滅多にない。
なんだか心配してくれてる殿には悪いけど、今気を緩めるとすごいにやけた顔になりそうだ俺。
「言ったでしょう、俺が餅を付いてアンタに食わせるって。
御膳がそろうまでアンタはしっかり座って待ってりゃいいんですよ。」
「…そう、なのか。」
「『同志』なんですからもうちょっと信用してくださいよ。」
「…すまん、今日の俺はどうかしている。」
おそらく島津になんか言われたんだろうね。
結構繊細だし。不快にさせやすい分逆も大いにあるって所か。
まぁでも、最終的に俺を頼ってきてくれてるんだから俺としては家臣冥利に尽きると言ったっていい。
「左近。」
「はいはい?」
「…俺は、勝ちたい。」
「判ってます。この島左近、命ある限り付き合いますよ。」
どうやら、早い所餅を搗く準備をしなきゃならなそうだ。
----
関ヶ原目前にいろいろネガティブでナイーブになってる三成。
左近は振り回されていると自覚しつつもそんな殿が大好きでしょうがないといい。
それはもうこの城じゃ当たり前のような光景だ。
―今日は島津の所の使い…か。
恐らく徳川に何かしら仕掛けようと持ちかけてあの人に門前払いされたんだろうな。
もうちょっと歯に絹を着せた物言いをしないとつかめるものも掴めませんよ殿。
家康の真似事をしろっていってんじゃない(むしろそんな事言ったら俺でも斬られそうだ)んだけど時々頭が痛くなることもある。
「殿ー、入りますよ。」
返事が帰る前に殿の部屋を開ける。
殿が執務に集中してるときは来客が誰であろうと入室者の確認をしようともしない。
そこでまず客さんの機嫌が悪くなる。
そりゃそうだろう。
「どうした左近。」
今も俺のほうをチラリと見もしないで問いかけてくる。
「いえね、今日の分の仕事片付いてちょっと暇を持て余したもんですから。」
「なら休めばいいだろう。」
「いやー生憎と真昼間から寝こける芸当は持ち合わせてないんですが。」
そこまで言うと殿の筆の動きが止まる。
そのまま一度立ち上がったかと思えば無駄のない動きで箪笥から何か取り出して俺に渡した。
「ならば其れを使って写経でもしていればいい。
お前の字は時々崩れる癖があるから丁度いいだろう。」
駄目だしされに来たわけじゃないんだけどな俺は。
いっその事殿に女遊びの一つでも教えたほうが有意義に過ごせるんじゃないか。
よもや『赤子はコウノトリが運んでくる』と言い出すのではあるまい。
「殿の仕事手伝ったっていいんですがね。」
「必要ない。」
「たまには碁でも打ちません?」
「打たぬ。」
「・・・・・。」
ちょっとくらいこっち見て答えてくれないもんですかね。
まぁでも執務に集中してるアンタの顔見るのも好きだからいいけど。
「左近。」
「はいはい?」
「…疲れていないか?」
「…はい?」
前触れもなくなんでしょうね行き成り。
俺からすりゃいつ寝てるかわかんない殿の方が疲れている気がするんだけど。
「別に今すぐ休みたいほど疲れちゃいませんが。」
「俺は…」
うーん、微妙に会話が噛みあってない。
…が、何か話し出そうとする殿の表情が少し変わったのは逃さない。
我ながら目ざとい。
「…お前に頼りすぎている気がしてならない。
俺は、俺の言葉は他人を不快にする。それが本意でなくともだ。」
ええそりゃもう。
「左近に対してもそうなっているのではないか。
そう思うと嫌になる。」
「殿…。やっぱちょっとお疲れ気味なんじゃないですか?俺が代わりますから殿は…」
「左近。」
今日はよく人の話遮るなぁ。
「『殿』はやめろ。」
…やっぱ相当疲れてんじゃないのかこのお方は。
「殿、正直言って意味わからないんですけど。」
「今は、…今だけは家臣の島左近ではなく、同志の島左近と話がしたい。」
あ、やっとこっちみた。
「俺にはお前は必要なんだ左近。お前を欠いては勝てる戦も勝てなくなる。
だからお前に過労で臥したりして欲しくない。だが俺はどうしてもお前に頼ってしまう。」
…なんだかんだいって結構思われてる。
それは長い付き合いだから良くわかってる。
けれど直接言葉にして聞くことは滅多にない。
なんだか心配してくれてる殿には悪いけど、今気を緩めるとすごいにやけた顔になりそうだ俺。
「言ったでしょう、俺が餅を付いてアンタに食わせるって。
御膳がそろうまでアンタはしっかり座って待ってりゃいいんですよ。」
「…そう、なのか。」
「『同志』なんですからもうちょっと信用してくださいよ。」
「…すまん、今日の俺はどうかしている。」
おそらく島津になんか言われたんだろうね。
結構繊細だし。不快にさせやすい分逆も大いにあるって所か。
まぁでも、最終的に俺を頼ってきてくれてるんだから俺としては家臣冥利に尽きると言ったっていい。
「左近。」
「はいはい?」
「…俺は、勝ちたい。」
「判ってます。この島左近、命ある限り付き合いますよ。」
どうやら、早い所餅を搗く準備をしなきゃならなそうだ。
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関ヶ原目前にいろいろネガティブでナイーブになってる三成。
左近は振り回されていると自覚しつつもそんな殿が大好きでしょうがないといい。
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