憑神

2008年12月20日 読書
軽い気持ちで本オフ行ったら、いい意味で後悔した。
久しぶりにまとめ買い。気付いたら財布が大寒波。もともとの元手もあまりなかったのに、なんか直感で選んだ本を諦めきれなかった。

結局買ったのは

憑神:浅田次郎
毛利元就:徳永真一郎
ICO:宮部みゆき
模倣犯 下:宮部みゆき
平成30年 上・下:堺屋太一
生物と無生物のあいだ:福岡伸一

の計6冊。

そして夕方過ぎに読み始めて今しがた読み終えたのがこの憑神。
数年前に公開されていた映画のCMをみて前々から興味があった作品。
映画の宣伝だけみてると、うだつの上がらない武士に、貧乏神に疫病神、はては死神まで取り付く、ドタバタコメディー系を想像していたのだけど、ところがどっこい、中々ストイックな話だった。

読む前は、なんとなく主人公は、ヘタレっぽく頼りないイメージがあったのだけど、それはむしろ主人公の兄の左兵衛の方で、主人公である弟の彦四郎は、義理堅く仁に篤い、幕末においてはむしろ時代遅れと揶揄されかねないバリッバリの侍だった。
文武両道で才能に溢れていながらも、ただ「次男」というだけでその本領が発揮できず、婿入り先では息子が生まれたとたん妻子と引き離され実家に出戻り、兄は兄で当主という立場にあるにもかかわらず救いようの無いダメ人間。
周囲の住民からは「息子が生まれる順番が逆ならきっと栄えた」などと言われる始末。

こうも恵まれないと人間てのはそれこそ「苦しいときの神頼み」に走る。
しかし、偶然とはいえ彦四郎が頼んでしまったのは神は神でも貧乏神。

これにとりつかれたとたん、彦四郎の家は取り潰しのような酷い仕打ちをうけにっちもさっちもいかなくなる。
あまりにも哀れな境遇に貧乏神は「宿替え」という処置がある。と話を持ち出す。

彦四郎が後ろめたさや罪悪感に苛まれながらも武士の務めであるお家のために貧乏神も疫病神も宿替えを使い免れる。
しかし最後に取り付いたのは死神。

ただでさえ武士道に背いたうえに、自分に降りかかった「死」を自分が生き延びるために誰かに擦り付けるなんてできない。

でも自分はこの幕末で腐っていく武士道の中で、どうしても武士の本懐を遂げるための死に場所にありつきたい。



殆どが彦四郎の心情で綴られていたのだけど、「多勢=正義」と認めない彦四郎の精神と、幕末という激動の時代の中で、愚直なまでに己を貫き通すその姿は、安易に「かっこいい」という言葉で片付けてはいけないと思う。


これ読むと映画の彦四郎が妻●木聡なのはどうしても解せない。むしろ左兵衛役の方が近い。



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