傷ついて泣いていた日もあった気がする 何かを信じようとして
2008年7月3日 SSその少女の目はただ粋然だった。
「天国…、天国…、あ、君は前科あるから地獄ね。」
今日は珍しく席を離れずに仕事をこなしていた。
たぶん昨日あまり役に立ったところを見たことが無い『閻魔七つ道具』を使ってサボろうとしたときに、いつもの倍以上に、詳しく言えば悪ゴメスさんに協力してもらって(ダメ元で頼んでみたら意外とあっさり承諾してくれた、案外根はいい人なのかもしれない。)お灸を据えたのが効いているのだと思う。
「どぅへ〜。ひょっと疲れた〜。」
「疲労の表現技法がよくわかりませんよ大王。大体毎日まじめに仕事してりゃいいんですよ。変態大王イカ。」
「今最後に辛辣なこと言わなかった?」
「言ってません。空耳ですよ。」
「そうか。」
―疑いもせずに信じやがったこのアホ。
「まぁでも、よく頑張りましたね。あと一人で今日の分は終わりです。さ、どうぞ次の方入ってください。」
机に突っ伏している大王を励ましリストのページをめくる。
大王も「よし頑張るよん」というぶん殴りたくなるような気合を入れて顔を上げた。
そして僕の呼びかけを聞いた今日最後の死人が大王の前に姿を見せる。
「え…。」
と大王の動きが止まった。
現れたのは、まだ幼い少女だった。
珍しいことではない。
地上で生きている物達に必ず訪れるそれは、別に定まった時期があるわけではないのだから。
その確率は低いとはいえ、転生してから間もない年月で再びこの地を訪れる事だってある。
「あ、えーと君は。」
大王は僕と同様にリストをめくる。
―享年5歳。交通事故。
同じ苗字の死人が来ていないから恐らくこの娘一人。
あるいは数日後に親族が来る可能性もある。
「えんまさん。」
大王が行き先を告げる前に少女が口を開いた。
「ん?なんだい。」
「わたしの舌を抜かないの?」
「えぇ!?抜かないよ!だって痛いじゃん!!」
―だっせぇ。
「お母さん言ってたもん。死んだらえんまだいおうに舌を抜かれるって。」
「舌を抜くのは悪いことをした人だけだよ。それに、それは単なる御伽噺だから本当に抜いたりはしない。」
大王が、自分の舌を引っこ抜かれたのを想像したのか小さく悲鳴を上げているのが見るに耐え切れなくて代わりに僕が答えた。
すると少女は大きな目を僕に向けて納得したかのように「ふ〜ん。」とだけ言った。
「それで、えんまさん。わたしはどっちにいくの?」
「え、もちろん天国だよ。お嬢ちゃんは何も悪いことしてないんだから。」
「でもこれからするかもしれないよ?『てんせい』っていうのをした後とかに。」
聡明な子なのかもしれない、と思った。それは知識とかそういう事じゃなくて、精神的な面で。あるいは大王より。
大王が押し黙った。
「そういう風に考えることが出来るなら、これから先も悪いことは出来ないと思うよ、君には。さぁ、そろそろ行く時間だよ。」
「うん、わかった。ねえ、えんまさん。」
僕は小さなその背中を軽く押した。
一歩二歩と階段を登ったところで少女は一度だけ立ち止まった。
「えんまさんはえんまさんじゃなくなったら何になるの?」
「俺はエンドレスフォーエバー閻魔大王さ!!」
「バカが移っちゃうから早く行ったほうがいいよ。」
「おおおお鬼男くん!」
親指を立て、舌をこう、イラッと来るようにペロッとだして答えた大王を見て僕はもう一度少女の背を押した。
少女はそれ以上何も言わず、立ち止まることも無く扉の中に入っていった。
「お疲れ様でした、閻…」
少女の姿が見えなくなったところで振り返ったとき、
閻魔大王は笑っていた。
僕が今まで見たことも無いようなそれは、なぜかいつか音を立てて壊れてしまうような気がした。
世界はまわると言うけれど何も私の中めぐるものなどないから
そっとただ窓の外眺め季節が移ろうのをみていましょう
----
なんだこの無駄にシリアス。おまえ明日面接じゃん!何死亡フラグたててるのっ。
-song by GARNET CROW 世界はまわると言うけれど-
★私信★
>>ハル
おめー書き込むの早ぇなおい(爆)
ニコ動での日和シリーズはみんな妄想力と技術力が逞しいから動悸が止まらないですよ。
もし第四期があるなら天国組はもちろん阿部さんとかもやって欲しい。そして是非竹ポンに戻ってきてもらいたい!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3361420
「天国…、天国…、あ、君は前科あるから地獄ね。」
今日は珍しく席を離れずに仕事をこなしていた。
たぶん昨日あまり役に立ったところを見たことが無い『閻魔七つ道具』を使ってサボろうとしたときに、いつもの倍以上に、詳しく言えば悪ゴメスさんに協力してもらって(ダメ元で頼んでみたら意外とあっさり承諾してくれた、案外根はいい人なのかもしれない。)お灸を据えたのが効いているのだと思う。
「どぅへ〜。ひょっと疲れた〜。」
「疲労の表現技法がよくわかりませんよ大王。大体毎日まじめに仕事してりゃいいんですよ。変態大王イカ。」
「今最後に辛辣なこと言わなかった?」
「言ってません。空耳ですよ。」
「そうか。」
―疑いもせずに信じやがったこのアホ。
「まぁでも、よく頑張りましたね。あと一人で今日の分は終わりです。さ、どうぞ次の方入ってください。」
机に突っ伏している大王を励ましリストのページをめくる。
大王も「よし頑張るよん」というぶん殴りたくなるような気合を入れて顔を上げた。
そして僕の呼びかけを聞いた今日最後の死人が大王の前に姿を見せる。
「え…。」
と大王の動きが止まった。
現れたのは、まだ幼い少女だった。
珍しいことではない。
地上で生きている物達に必ず訪れるそれは、別に定まった時期があるわけではないのだから。
その確率は低いとはいえ、転生してから間もない年月で再びこの地を訪れる事だってある。
「あ、えーと君は。」
大王は僕と同様にリストをめくる。
―享年5歳。交通事故。
同じ苗字の死人が来ていないから恐らくこの娘一人。
あるいは数日後に親族が来る可能性もある。
「えんまさん。」
大王が行き先を告げる前に少女が口を開いた。
「ん?なんだい。」
「わたしの舌を抜かないの?」
「えぇ!?抜かないよ!だって痛いじゃん!!」
―だっせぇ。
「お母さん言ってたもん。死んだらえんまだいおうに舌を抜かれるって。」
「舌を抜くのは悪いことをした人だけだよ。それに、それは単なる御伽噺だから本当に抜いたりはしない。」
大王が、自分の舌を引っこ抜かれたのを想像したのか小さく悲鳴を上げているのが見るに耐え切れなくて代わりに僕が答えた。
すると少女は大きな目を僕に向けて納得したかのように「ふ〜ん。」とだけ言った。
「それで、えんまさん。わたしはどっちにいくの?」
「え、もちろん天国だよ。お嬢ちゃんは何も悪いことしてないんだから。」
「でもこれからするかもしれないよ?『てんせい』っていうのをした後とかに。」
聡明な子なのかもしれない、と思った。それは知識とかそういう事じゃなくて、精神的な面で。あるいは大王より。
大王が押し黙った。
「そういう風に考えることが出来るなら、これから先も悪いことは出来ないと思うよ、君には。さぁ、そろそろ行く時間だよ。」
「うん、わかった。ねえ、えんまさん。」
僕は小さなその背中を軽く押した。
一歩二歩と階段を登ったところで少女は一度だけ立ち止まった。
「えんまさんはえんまさんじゃなくなったら何になるの?」
「俺はエンドレスフォーエバー閻魔大王さ!!」
「バカが移っちゃうから早く行ったほうがいいよ。」
「おおおお鬼男くん!」
親指を立て、舌をこう、イラッと来るようにペロッとだして答えた大王を見て僕はもう一度少女の背を押した。
少女はそれ以上何も言わず、立ち止まることも無く扉の中に入っていった。
「お疲れ様でした、閻…」
少女の姿が見えなくなったところで振り返ったとき、
閻魔大王は笑っていた。
僕が今まで見たことも無いようなそれは、なぜかいつか音を立てて壊れてしまうような気がした。
世界はまわると言うけれど何も私の中めぐるものなどないから
そっとただ窓の外眺め季節が移ろうのをみていましょう
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なんだこの無駄にシリアス。おまえ明日面接じゃん!何死亡フラグたててるのっ。
-song by GARNET CROW 世界はまわると言うけれど-
★私信★
>>ハル
おめー書き込むの早ぇなおい(爆)
ニコ動での日和シリーズはみんな妄想力と技術力が逞しいから動悸が止まらないですよ。
もし第四期があるなら天国組はもちろん阿部さんとかもやって欲しい。そして是非竹ポンに戻ってきてもらいたい!
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3361420
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