世界は広く知らない事溢れてて自分さえ見失いそう
2007年10月8日 SSだけど君と生きてゆきたいから 戸惑いながらでもいい
つないだ手を離さないでね
『休憩するぞ、10分だけ、な。』
ネズミがそう言ったのが今から10分前。
「・・・・。」
僕は常時薄暗い周囲に目が慣れてきたことに、妙な感じを覚えながら、隣でうずくまったままのネズミを見た。
「ネズミ。もう10分たったよ。」
肩を揺らしてみる。
―応えない。
不明瞭な視界の中ではネズミの肩がちゃんと呼吸に合わせて上下しているのも見えない。
まさか、そんな、
文にならない言葉が単語だけで脳内をよぎる。
僕はネズミの正面に回って、今度は両肩をつかんだ。
「…ネズミってば。」
―応えない
僕が肩を前後に揺らす振動に合わせて肢体がガクガクと動くだけだった。
嘘だ、嫌だ、怖い、
負の感情ばかりが周囲を包んだ。
「ネズミ!!」
空腹で、疲れ切っていて、喉が焼け付くようにカラカラだった。
なのに僕の口から出た声は自分で思っていた以上に反響した。
「…し、おん」
項垂れていた首がゆっくりと僕に向けられた。
僕は肺の奥にたまっていた空気をめいっぱい吐き出した。
救済されたような気分に陥ってるとネズミの手が僕の頬に触れる。
「なんだよ、青い顔して。」
「だって、君が…僕が起こしても、起きないから…」
ネズミが薄暗い中、僕でもはっきりわかるように笑った。
「永眠してるかと思ったか?残念だったな。」
「ネズミ…!」
冗談でも聞きたくない。
肩を掴んだままの僕の指がネズミの服に皺を作る。
「ふん、今度は真っ赤だ。あんたの顔見てると本当面白い。
…心配しなくても、ちょっとばかり熟睡してただけだ、俺は。」
「じゅく、すい…?」
「『こんなときに何考えてるんだ』って顔だな。俺にもよくわからないけど、この10分間、意識が完全に飛んでた。」
僕の頬に触れていた手をぶらりと落とした。
「ま、一人じゃ何も出来ない赤子同然のアンタをほっぽり出して死ぬようなマネはしないさ。」
「…うん。」
ネズミの眉がゆがんだ。
「なんだ?やけに素直だな。」
だって、そうだ。
本当のことだ。
怖い。
「君に死なれたら困る。」
「・・・・・。」
ポロリと零れた言葉に、ネズミの目が一瞬大きく開いた気がした。
そのまま何かを誤魔化すような小さなため息を着いたかと思えばスッと立ち上がる。
その時僕の手も掴んで立たされた。
コツン、と小さな音がした。
僕は何が起きたのかその場で瞬時に理解することは出来なかった。
気がついたときにはネズミの顔が僕の鼻先に触れるくらいに近づいていた。
ネズミは僕の頬を両手で包み込むようにしながら、目を瞑って額と額を合わせていた。母親が子供の熱を測るみたいに。
「ネズミ…?」
「確かに、アンタ一人じゃ何にも出来ない。死ぬだけだ。
でも、俺一人でもこの先死ぬだけだ。俺はアンタみたいな要領のでかい頭は持ち合わせてないからな。そこはアンタが自身もって良いことだろ。」
「ネ」
「ほら、休憩終わり。行くぞ、紫苑。」
そういって握られた手はいつもより暖かくて強かった気がした。
----------
NO.6の6巻の終盤辺りを意識。
二人の互いの依存度が強くなってるのも好きだけど、外で頑張ってるイヌカシが前より好きになった私。
song by GARNET CROW -夏の幻-
つないだ手を離さないでね
『休憩するぞ、10分だけ、な。』
ネズミがそう言ったのが今から10分前。
「・・・・。」
僕は常時薄暗い周囲に目が慣れてきたことに、妙な感じを覚えながら、隣でうずくまったままのネズミを見た。
「ネズミ。もう10分たったよ。」
肩を揺らしてみる。
―応えない。
不明瞭な視界の中ではネズミの肩がちゃんと呼吸に合わせて上下しているのも見えない。
まさか、そんな、
文にならない言葉が単語だけで脳内をよぎる。
僕はネズミの正面に回って、今度は両肩をつかんだ。
「…ネズミってば。」
―応えない
僕が肩を前後に揺らす振動に合わせて肢体がガクガクと動くだけだった。
嘘だ、嫌だ、怖い、
負の感情ばかりが周囲を包んだ。
「ネズミ!!」
空腹で、疲れ切っていて、喉が焼け付くようにカラカラだった。
なのに僕の口から出た声は自分で思っていた以上に反響した。
「…し、おん」
項垂れていた首がゆっくりと僕に向けられた。
僕は肺の奥にたまっていた空気をめいっぱい吐き出した。
救済されたような気分に陥ってるとネズミの手が僕の頬に触れる。
「なんだよ、青い顔して。」
「だって、君が…僕が起こしても、起きないから…」
ネズミが薄暗い中、僕でもはっきりわかるように笑った。
「永眠してるかと思ったか?残念だったな。」
「ネズミ…!」
冗談でも聞きたくない。
肩を掴んだままの僕の指がネズミの服に皺を作る。
「ふん、今度は真っ赤だ。あんたの顔見てると本当面白い。
…心配しなくても、ちょっとばかり熟睡してただけだ、俺は。」
「じゅく、すい…?」
「『こんなときに何考えてるんだ』って顔だな。俺にもよくわからないけど、この10分間、意識が完全に飛んでた。」
僕の頬に触れていた手をぶらりと落とした。
「ま、一人じゃ何も出来ない赤子同然のアンタをほっぽり出して死ぬようなマネはしないさ。」
「…うん。」
ネズミの眉がゆがんだ。
「なんだ?やけに素直だな。」
だって、そうだ。
本当のことだ。
怖い。
「君に死なれたら困る。」
「・・・・・。」
ポロリと零れた言葉に、ネズミの目が一瞬大きく開いた気がした。
そのまま何かを誤魔化すような小さなため息を着いたかと思えばスッと立ち上がる。
その時僕の手も掴んで立たされた。
コツン、と小さな音がした。
僕は何が起きたのかその場で瞬時に理解することは出来なかった。
気がついたときにはネズミの顔が僕の鼻先に触れるくらいに近づいていた。
ネズミは僕の頬を両手で包み込むようにしながら、目を瞑って額と額を合わせていた。母親が子供の熱を測るみたいに。
「ネズミ…?」
「確かに、アンタ一人じゃ何にも出来ない。死ぬだけだ。
でも、俺一人でもこの先死ぬだけだ。俺はアンタみたいな要領のでかい頭は持ち合わせてないからな。そこはアンタが自身もって良いことだろ。」
「ネ」
「ほら、休憩終わり。行くぞ、紫苑。」
そういって握られた手はいつもより暖かくて強かった気がした。
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NO.6の6巻の終盤辺りを意識。
二人の互いの依存度が強くなってるのも好きだけど、外で頑張ってるイヌカシが前より好きになった私。
song by GARNET CROW -夏の幻-
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