deserted child
2006年8月1日 SS厳島が、堕ちた。
残る高松城で一時の難を逃れるも攻められるのは最早時間の問題
―忌々しい、役立たずの駒共めが
ぎり、と家臣に気取られないよう唇を噛む。
急ぎ取り付けたばかりの屋根からは天から落ちる大量の雫を抑え切れていない。
隙間を抜ける雨水が元就の頬を、鎧を、濡らす。
「…元就様」
小さくギュッと握った拳に気付いた軍師が伺うように問う。
その声に我に返った元就は卓上に展開させた布陣の図へ生気なく視線を落とした。
「いかがいたしましょう、この戦場の打開、どう見られまする。」
「我が兵どもが奴らの雑兵を自船に乗せねばいいだけのこと。
我に同じ事を二度も言わせるでない。」
「も、申し訳ございませぬ…。」
この愚か者を今すぐ殺してしまいたい。と思った。
しかし今の状態ではたとえ一兵でも惜しい。
元就はどうにもやり切れぬ思いと振るえぬ采配に唯苛立ちを覚えるだけだった。
「で、伝令!!元就様!!」
そこへ突然、足の速い足軽が一人慌しく転がり込むように駆けつけてきた。
「何事だ騒々しい。」
元就は敵将に向けるような冷めた視線をその足軽にやった。
その視線に足軽が小さくひぃと声を上げたことには目を瞑る。
「長曽我部軍自船に乗り込み完了!ま、まもなく此方に総攻撃を開始する動きあり…!!」
「なに…?!貴様ら…我の策を遂行せよとあれ程…!
我が軍の被害状況…いや、そんな物はどうでもよいすぐに代わりの兵どもを出せ。
背に火薬玉を背負わせその船に突撃させよ。」
淡々としながら告げた言葉に軍師と足軽が息を呑む音が聞こえた。
「聞こえなかったのか。早々に取り掛かれ。」
「…承知。」
膝をついていた足軽が頭を下げた後立ち上がって戦場へと馳せ戻る。
軍師がいまだ元就の表情を伺うように見ていることに気づき、視線だけで「下がれ」と告げた。
―長曽我部元親。…西海の鬼…
目を瞑り天を仰ぐ。
黒雲は途切れず、日を隠し雨を降らしている。
―…日輪も我を捨てる、か。
「おう、おめぇらとっとと準備しやがれ!」
「へい兄貴!もう間もなく!」
―日輪の捨て子…。俺が拾い上げにいってやろうじゃねぇか
船上の鬼が、笑ふ。
----
さっそくかよ。みたいな、ね。
どうせなら元親の姫若子の時の流れも組んでほしかったなー。
残る高松城で一時の難を逃れるも攻められるのは最早時間の問題
―忌々しい、役立たずの駒共めが
ぎり、と家臣に気取られないよう唇を噛む。
急ぎ取り付けたばかりの屋根からは天から落ちる大量の雫を抑え切れていない。
隙間を抜ける雨水が元就の頬を、鎧を、濡らす。
「…元就様」
小さくギュッと握った拳に気付いた軍師が伺うように問う。
その声に我に返った元就は卓上に展開させた布陣の図へ生気なく視線を落とした。
「いかがいたしましょう、この戦場の打開、どう見られまする。」
「我が兵どもが奴らの雑兵を自船に乗せねばいいだけのこと。
我に同じ事を二度も言わせるでない。」
「も、申し訳ございませぬ…。」
この愚か者を今すぐ殺してしまいたい。と思った。
しかし今の状態ではたとえ一兵でも惜しい。
元就はどうにもやり切れぬ思いと振るえぬ采配に唯苛立ちを覚えるだけだった。
「で、伝令!!元就様!!」
そこへ突然、足の速い足軽が一人慌しく転がり込むように駆けつけてきた。
「何事だ騒々しい。」
元就は敵将に向けるような冷めた視線をその足軽にやった。
その視線に足軽が小さくひぃと声を上げたことには目を瞑る。
「長曽我部軍自船に乗り込み完了!ま、まもなく此方に総攻撃を開始する動きあり…!!」
「なに…?!貴様ら…我の策を遂行せよとあれ程…!
我が軍の被害状況…いや、そんな物はどうでもよいすぐに代わりの兵どもを出せ。
背に火薬玉を背負わせその船に突撃させよ。」
淡々としながら告げた言葉に軍師と足軽が息を呑む音が聞こえた。
「聞こえなかったのか。早々に取り掛かれ。」
「…承知。」
膝をついていた足軽が頭を下げた後立ち上がって戦場へと馳せ戻る。
軍師がいまだ元就の表情を伺うように見ていることに気づき、視線だけで「下がれ」と告げた。
―長曽我部元親。…西海の鬼…
目を瞑り天を仰ぐ。
黒雲は途切れず、日を隠し雨を降らしている。
―…日輪も我を捨てる、か。
「おう、おめぇらとっとと準備しやがれ!」
「へい兄貴!もう間もなく!」
―日輪の捨て子…。俺が拾い上げにいってやろうじゃねぇか
船上の鬼が、笑ふ。
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さっそくかよ。みたいな、ね。
どうせなら元親の姫若子の時の流れも組んでほしかったなー。
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