晴天のもと、空と風を切り裂き焔を放つ音が耳に響く。

「…やれやれ、精が出るこって…。」

「…?佐助か?」

太い木の枝に逆さまに立ちながらぼやく声が聞こえ、声の主に振り返ると同時に双槍の音が止んだ。
頭髪をまとめる為に結んだ赤い紐が揺れる。
それを目で追いながらくるっと体を返し地に下りる。

「戦のない日一日位そういうものから手ぇ放そうとは思わないの?」
「何を言う、こういう日だからこそいつなんどき御館様を狙う者が現れてもよいように鍛錬をすべきだ。」

忍びにしては聊か派手な赤みがかった髪を掻きながら問うた佐助に、さも当然のように幸村が返した。

「…あぁ、そ」


―ほんっと、愛されてるねぇ武田の旦那



「何か用か佐助、無ければ俺はこっちを続けたいのだが。」

その場に溜息をつきながら腰を下ろす佐助を見やり幸村が言った。問いの返答を待ちながらその両手は既に地に刺さった槍に伸びていた。

「ねえ旦那。」

胡坐を掻いた膝の上に肘を置き頬杖を付きながら佐助が口を開く。

「旦那は何であの大将について行ってんの?」

その問いに幸村は槍をズボっと抜きながら、一瞬だけ佐助を見る。

「我が真田家は代々御館様に仕えてきた。」
「…それだけ?」
「俺はあの方こそこの国を統一するに相応しいお方だと信じている。
それに御館様は俺の尊敬すべき人、その方の手助けをしようとするのに理由などいるのか?」

佐助のその疑問をぶつけてきた事の方が疑問に感じてしまった幸村は少しきょとんとしたような表情で答えた。

「なぜそのような事を聞く?…まさか、お前御館様を…?!」
「ちゃうちゃう、ただ聞きたかっただけ。」

話の素っ頓狂な飛躍に、肘を付いていないほうの手をぷらぷらと振る。

「俺が仕えてんのは武田の大将というより、旦那。
 俺は旦那にずっと付いてくつもりだし、旦那が武田の大将を支えるってんなら俺はそんな旦那を支えたいだけよ。」
「…そうか。」

佐助の答えを聞くと幸村は肩と腕をならすようにゆっくりと槍を振り出した。


―あらら、軽く流されちゃったよ。今俺結構いいこと言ったんだけどねぇ。


「佐助?」
「はいよ?」

かくっと軽くうなだれた佐助を見て、尚も素振りを止めずに幸村が声をかけた。
その声に首を上げて幸村の顔を見上げた。

「…もしかして、お前怒っているのか?」
「…へ?」

突拍子も無い問いに今度は佐助が素っ頓狂な声を上げた。

「俺は時々佐助が何を思っているのかわからないんだ。
 怒っているのかそうじゃないのか、お前は感情を表に出さないから…。」
「いやそりゃ俺忍びだし。」

―やっぱこの人…

「幸村ー!!幸村!何処におるか!!」

突然城の奥のほうから遠くまで重く響く野太い声が届いた。
幸村はその声にぱっと顔を明るくする。
もし彼に犬の耳でも付いていたらピクっと立てていそうだ。

「御館様!!幸村こちらに!!只今より早急にそちらに参りまする!!御用ならなんなりと!!」

大声で答えながらきびすを返し、忍びの自分の俊敏さすら凌ぐのではないかというような速さで幸村は走り出した。

「おいおい旦那舌かまないでよ?」

―やっぱりこの人、そうとう虚け者かもね、大将に関してないことなんか特に。

…たまには掟破って直情的にいった方がいいのかねえ…。

どんどん小さくなる幸村の背中を佐助はただ見つめていた。


---

すみません、耐え切れず書き殴ってしまいました。
だって…

だって

幸村バカなんだもん。それを通り越して可愛いんだもん

ところで史実じゃ幸村って自身が直接信玄に仕えてたことがないらしいんですね。
真田家が武田家に仕えていたのは事実ですが。

というか武田さんが戦の最中に病死してしまうシーンがこのゲームでもあったら幸村どうするのかね。

後追いとかしちゃうのかね。(おい)

☆拍手レス☆

18時頃の方々
本当にありがとうございます。スタミナ溜まってきますよー。

コメント

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